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Girl memory Loss of elder brother
シックが病院から逃げ出してから2週間後の事。
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「…ッ……?」
目を覚ますと、見知らぬ個室の中にいた。
立ち上がろうとするが頭がグラグラしてふらついてしまう。
ここは…どこ…?
所々に血痕や、肉片が散りばめられていた。
女の人が一人、作業服を着た男の人が2人横たわっていた。
女の人は人間の形を留めておらず、グチャグチャになっていたが、どことなく知り合いに似ていた。
「あ…あの、大丈夫ですか…?」
声をかけるが、3人とも冷たくなっていた。
一体何があったのだろうか…。
その時、ふとある言葉が過ぎる。
「…シック…??」
シック…って何…。
私どうかしちゃったのかな…。
今ここでやる事は無い…。
とりあえず、付近のナイフを取って私は建物を後にした。
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あれから2週間。
俺は当てもなくただ歩き続けた。
何回か男に襲われたり、変な連中に絡まれたりしたのだが…。
ここから先何をしたら良いのか分からず、俺はただ歩き続けることしか出来なかった。
アメリア…、アイリス…。
どうしてこんなことに…。
俺が一体何をした…?それともアメリア…?
どうして…。
「お兄さん…大丈夫かい?」
後ろからおばさんに声をかけられた。
どうせ、いつものだろう…。
『えぇ…大丈夫ですよ。お気になさらず…。』
そう言って俺は老母の先を歩いた。
その時、体がガクンっと傾いた。
『…?!』
「やっぱり大丈夫じゃないよ!随分窶れた顔して…。ちゃんと食事をしているのかい…?せめて食事だけでもいいから家においで!」
確かに、数日は何も口にしていなかった。
路上に落ちてた食べかけのパンとか、川の水を時々しか口にしなかったからお腹が空いていたのだ。
流石にマズイか…。
『ありがとうございます…。食事だけ、頂きますね。』
そう言って俺は老母と共に家へ向かった。
家は差程大きくなく、老母だけが暮らしていた。
町外れで近くに民家はなく、一つだけポツンと建っている。
「さぁさ、暖かい暖炉が奥の部屋にあるんだよ。寒いだろうから温まっておいで。食事は今作るからね。ゆっくり寛いで行きなよ。」
『わざわざ、ありがとうございます…。』
何故この老母は俺に親切にしてくれるのだろうか。
もしかしたら食事の後、俺を殺すのかもしれない。
まぁいいや…。どうせアメリアもアイリスも死んでいるんだ。どうなってもいいよな…。
「ほら、出来たよ。暖かいクリームシチューだ。冷めないうちにお食べ。」
湯気が立ったクリームシチューは数日間まともな食事をしてない俺にとっては最高のご馳走だった。
『頂きます。』
この味…。小さい頃に母が作ってくれたシチューの味に似ていた。
「おや…涙が出るほど美味しかったかい?」
気が付くと俺は泣いていた。
『あ、い…いや、これは…ッ!』
「いいんだよ泣いても。いっぱい泣きな。辛いことがあったら泣くのが一番さ…。今までずっと大変だったね…。」
そう言って老母は俺の頭を撫でた。
今まで辛かった事、苦しかった事が一気に込み上げてきて涙が止まらなかった。
老母は俺を、抱きしめて泣き止むまで頭を撫で続けてくれた。
「もう大丈夫かい?冷めてしまったね。温め直してあげようか。」
『いえ…大丈夫ですよ。ありがとうございます。』
「そうかい…?それじゃゆっくり休んできなよ。私はベッドを綺麗にしてくるからね。お兄さんの分も綺麗にしておくよ。」
『あ、あぁ…。ありがとうございます…。』
老母は何もかも俺にしてくれた。
食事の後、お風呂に入って歯を磨いてベッドに入った。
「今日はもうゆっくりおやすみ。」
『はい…おやすみなさい。今日は色々ありがとうございました。』
「いいんだよ。遠慮しないでおくれ。」
そう言って老母は部屋を出た。
この人なら…。大丈夫なのだろうか。
でも…、ずっと迷惑をかけ続ける訳にはいかない。早いことお礼を言って出ていかなければ…。
でも…その後どうする…?
また同じことの繰り返しだ…。
まぁいいや…。明日考えよう…。
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「おい、嬢ちゃん。こんな夜に1人で歩いてどうした?家出か?」
酔っ払ったおじさんが絡んできた。
「いえ…、ごめんなさい。私、先を急いでいるの。」
「そんなこと言わずにさぁ〜?おじさんと遊ぼうぜ?」
めんどくさい奴が絡んできたものだ。
はぁ…。
この辺りは人通りが多い…。
場所を変えようか。
「もう…!わかった。じゃあ人目のつかない所で…ね?」
そう言っておじさんは私を人目のつかない路地裏へ連れて行った。
路地裏は薄暗くて所々灯りがあるものの、一部しか照らしていないので周りが見えづらかった。
「じゃ…じゃあ服を…ね??脱いでよ…!」
おじさんはハァハァと息を荒くして私に近づいた。
「わかった…!わかったから!ちょっと待って…。それじゃあおじさんが先に脱いだら脱いであげる。」
そう言うとおじさんはいそいそと服を脱ぎ出した。
その隙に、私はポケットから病院から取ってきたナイフでおじさんの首を切りつけた。
「な…ッ!!?何すんだ…おま、ッ!!?」
「しーっ…静かにしなきゃ…。ふふっ…遊びはこれからだよ…?」
それから四肢を切り離し、首を切断した。
辺り一面、血と肉片でいっぱいになる。
「ちょっとやり過ぎたかなぁ…?わざわざありがとうね。こんな路地裏に案内してくれて。服を脱いだのは切断しやすくするためかな?」
そう言って私はおじさんを後にした。
「おい、聞いたか?テイラーの奴が逃げたんだと。」
「はぁ?嘘だろ?あーあ…ベルモンドさん怒るぞ…。」
「当分は近寄らない方がいいな…。」
テイラー…?私の事?
それにベルモンドって…組織のボスじゃないか。
ダメだ…。アイツらの近くに行ったら…。
…?何故?
それより私は何故組織の外に…?
今までずっと独房にいたはずなのに…。
いつの間に外に出たんだろう…。
組織のヤツらがまだ何か話をしている…。
「っていうか…アイリス。アイツが死んだらしい…。いいなぁ…俺あの子抱きたかったぜ。」
「あぁ…。テイラーのメスガキ出して逃げ出したからだろ。なんの目的で出したんだろうな?」
「さぁな。あー…、ベルモンドさんと上位のヤツらと明日の午後2時から会議かぁ…。」
「ははっ、お前そりゃ災難だな…。」
アイリスが私を連れ出した…?
じゃあ、あの建物にいた女の人(?)の死体はアイリスだったって事…?
とにかく明日の午後2時、組織に向かわなくては…
自分が今、何をするべきなのかを探らなきゃいけない。
そこに行けば、なにかヒントが得られるのかもしれないし…。
ひとまず、ヤツらから離れた所で寝よう…。
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