The murder cried An unpleasant love

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The murder cried An unpleasant love

翌朝。 「ふわぁ…。」 町は薄暗くて人気なく、静かな雰囲気に包まれていた。 私は組織を目指して歩いた。 途中、情報屋さんから組織の場所を教えて貰った。ここからは差程遠くないようで、町を少し超えた先にある。 組織周辺にはガラの悪いヤツらがよくいるらしいが、そんなことよりも私は行かなければならない。 何をするべきなのか探らなくては。 それと…出来ればアイリスが何故私を連れ出したのかと…【シック】っていうのも気になるし、 人の名前なのか…あるいは他の何かなのか…。 う〜ん…。 組織周辺に着くと、情報屋さんの言う通りガラの悪いヤツらがガヤガヤと騒いでいた。 万が一襲われたら対応できるように、ナイフは取り出しやすいように袖の中にしまっておこう。 騒いでいる中の隙間を何とか抜け出し、ヤツらに気づかれずに済んだ。 さらに奥に進むと見覚えのある組織の本部があった。 この間殺したおじさんが持っていた時計を見るとまだ昼間だった。会議の時間まであと2時間ほどある。 ひとまず施設内のバレなさそうな所で待機することにした。 2時間後。 本部から人がゾロゾロと出てきた。 「そろそろね…」 私は組織の裏口へ向かった。 ここからならヤツの自室まで近い。 そーっと扉を開け、私は2階へ静かに向かった。会議をする場所は本部を少し離れた場所で 行われる。小さい頃に記憶済みだ。音もしないから、誰もいないだろう。 2階へ上がり、ヤツの部屋の前に着いた。 「お前、テイラーの娘だな?」 振り向くと後ろには大きな男が立っていた。 息が詰まった。気配がしなかった。 だが、彼はベルモンドではなかった。 「…?!」 「気付かれないとでも思ったか?お前は会議の日は全員いなくなると思っていたのだろうが、実はいるんだよなぁ。監視役が。」 男は淡々と告げる。 どうする…。コイツの実力がどれくらいなのか分からない。覇気はあるが、武器は持っていない。もしや格闘家…?そうとなればかなり厄介だ。 「予想外だったよ。まさか見つかるとはね…。で?私をどうするの?」 「もちろんベルモンドさんの所へ連れていく。会議中でも何かあれば報告しろとの事だからな。これで俺も昇格出来るぜ。」 男は私を抱き上げ、歩き出す。 「離してよ。」 「断る。」 私がナイフを振り上げたのと同時に男の拳が私に振りかかろうとするが、私は拳をギリギリでかわしてヤツの顔面を切り裂いた。 「やるじゃねぇかアンタ…。流石はテイラーの娘だなぁ!!いいぜ、そういうの。お前を殺してベルモンドさんにその亡骸を突き出してやらァ!!!」 「殺れるもんならやってみなよ。私も、大人だからって躊躇しないんだから。」 私は再びナイフ持ち直し、男も体勢を直す。 男が伸ばす腕をナイフで受け止め、下に思いっきり降ると激しく鮮血が吹き出し男は甲高く笑う。 「いいなァ…!お前…!いいなァァァァ!!!」 男は興奮しきっている。今の所、こちらが優勢ではあるが少しでも気を抜けば殺られる。 その後も切り掛り殴り掛かりが続き、遂に男が倒れた。失血死だ。 「はぁ…はぁ…ッ…」 勝つ事は出来たが、流石に慣れない戦いで体が堪えた。 急いでヤツの自室の中を漁ってどこかへ逃げなければ…。 ドアを開けると中央には机と椅子。 その両壁には本棚や、資料などがあった。 机には日記が置いてあった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 6/18 Sat アイリスが組織を裏切った。処刑予定のアメリアを連れ去って組織から出て行った。 恐くシックの元へ行った。 支配人5人を送り、監視へ向かわせた。 見つけ次第殺させる。 7/26 Tue アイリスが組織へ戻ってきた。 なんのつもりだと問うと、「殺すために戻って来た」と言い出し、俺の部下を襲った。 俺もアイリスと交えたが、彼女は諦めてどこかへ逃げていった。 12/29 Thu 明日は会議の日。 アメリアが一向に見つからない。 シックは殺しの実力があると聞いて生かしておくつもりだったが見せしめにアイツも殺せばいい。部下へ両名の殺害を命じた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー たった3日だけ記されていた。 シック…。またしてもこの単語だ。 どうやら人の名前らしい。そして私に関係のある人物。どういうこと…? さらに部屋を漁ると組織の名簿が出てきた。 アメリア・テイラー (11) 失踪 シック・テイラー (11) 自宅にて保護? クリス・テイラー(34)処刑済 シエスタ・テイラー(33)処刑済 「家族の…名簿…??」 父さんと母さんの名前とシックという名前があった。 今までの組織のヤツらの会話やベルモンドの日記、この名簿からしてシックは私の兄らしい。 すると頭がズキッと痛んだ。 「…ッッ!!??」 視界がグラグラしてうまく立てず、その場に座ってしまった。 「何してんだ?アメリア。」 痛みが治まらず俯いているとヤツが帰ってきてしまった。 「ベル…モンド…ッ!!??」 「久しぶりだな。シックはどうした?一緒にいないのか?」 ベルモンドは心配そうに聞いてきた。 「どうもこうも…アンタらのせいで…ッ!!」 シックがいなくなった、と言うつもりだったが 頭痛どころかだんだん息が詰まるようでそこまで言えなかった。 「俺たちのせい?それは違うぜ。」 冷静に答えるベルモンド。私はただヤツを睨み付けることしか出来なかった。 「お前、両親が死んでる事は知ってるだろ?」 「それが何よ…ッ!」 「アイツらは良い奴だったよ…。今でも覚えてる。クリスは銃の扱いが上手かったんだ。組織の中でも指折りの存在だったよ。シエスタは短剣を使ってたな。アイツも上手かった。だがな、」 そこで話を止めた。 「…何よ?」 「アイツらは聞き分けが良くなかったな。子供二人とあの家で暮らしながら組織の仕事に務めたいって言い張るんだ。それじゃ困るんだよ…。俺の駒は常にそばに居てもらわなきゃ困るんだ。」 自分が1番正しいかのように言うベルモンド。 私は痛みに耐えながら立ち上がってベルモンドにナイフを向けた。 しかし、頭痛により勢いが足りずベルモンドに腕を掴まれてしまった。 「何?殺るの?殺っちゃう?面白いね君。」 煽り気味に喋るベルモンドに対し、こんな奴に勝てないのかと自分が憎らしくなる。 「そんなことが理由なの…?!何が駒よッ!?父さんと母さんはアンタの駒じゃないッ!私とシックの大切な家族なのよッ!!!」 ベルモンドは嘲笑うように私に言い返す。 「はっはっはっ!残念だったな。その【駒】はもう死んじゃったんだよォ!?今更何言ったって無駄なんだよ!!」 その瞬間、腹部を切り裂かれた。 「……ッッ!!!??」 「お前、もういらねぇわ。じゃあな。」 腕を掴まれたまま、私は窓から放り出されてしまった。 自分の体と共に落ちていく鮮血を見て、あぁ、もう死ぬのか、シックにもまた会えずに…。 「シック…」
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