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The murderer tears to resume
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老母に住ませて貰ってから2日。
「そうか…そんなことが…。私、80年ぐらい生きてきたけど貴方みたいなそんな若い頃から辛い思いなんてしたことが無いよ…。」
老母は涙を流しながら俺の話を聞いていた。
『 仕方ないんです。そういう運命だったので…。きっと、俺とアメリアはそれを覚悟して産まれてきたんだと思います。それでもあの優しかった両親の元に産まれたかったんだって…。』
すると老母はさらに涙を流した。俺は必死に老母を宥める。
アメリアは…生きているのだろうか。
ふと、そう思った。
何故か日が経つにつれ、アメリアが生きているような気がした。違うかもしれないし、そうかもしれない。
1度、周辺だけでも探してみるのも手なのかもしれない。
今はまだ朝だ。全然時間はあるし探す余裕も十分にある。
行ってみるか。
朝食のお皿を片付けた後、俺は外に出た。
老母には夕方までには帰ると言ってきた。
『さて…どうやって探そうか…。』
それもそうだ。情報量が少なすぎる。
最後に会ったのはあの病院の中。
そこからは行方知れずで、生きていることすら分からない。
とりあえず街に行けば何かしら分かるような気がする…。
そして俺は街を目指して歩いた。
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「…ッ!!」
気が付くと草むらの上で寝ていた。
そうだ…確か私は組織の本部に潜入して…そしたらやつにバレて落とされて…。
そうだ。そこでやっと全てを思い出したんだ。
「シック…!!」
バッと立ち上がろうとしたが切り裂かれた傷が痛くてよろけてしまう。
再びゆっくり立ち上がるが、まだ本調子ではないようだ。
このまま誰かに襲われでもしたら、たとえ下級の人間でも当然勝ち目がないだろう。
小さな病院でも、近くにないだろうか。
そういえば町はここから差程遠くはなかった。
このぐらいなら歩いて行けそうだし、さっさと治療してもらってシックを探しに行こう。
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町に着くと朝でも騒がしかった。朝一の市場や学校に行く子供たち、大勢の人間たちで賑わっている。
こんなに人が溢れかえっている中でアメリアに関する情報はきっと得られるに違いない。
俺は色んな人に聞いて回った。
…が。
「知らないなぁ。赤い瞳なんて珍しいね。」
「君ぐらいの背の女の子は沢山いるけど君と似た女の子は見たことがないよ」
「いつもここを通る子供たちと挨拶をするけど貴方みたいな子は見なかったわ。」
「女の子か…。分かんないなぁ…。」
どれも分からずじまいである。
こんなに人がいるのにまさか何一つとして分からないとは…。
まぁそれもそうだ。アメリアはずっと独房に閉じ込められていた訳だし、もしこの近くに組織の本部があったとしても誰も分からないだろう。
となると、捜査はますます難航になる…。
どうしたらいいんだろう…。
そう考えながら街ゆく人に聞きまくっていると、もうお昼になっていた。
『お腹空いた…。』
近くのお店でサンドイッチでも買うか…。
店の中に入ると席が空いてなかった。
丁度お昼というのもあって、来るタイミングが悪かった。
仕方が無いのでたまごサンドを一つ、老母に持たされていたお金で買い、近くの公園の隅で食べる事にした。
老母が作る朝食のサンドイッチも美味しかったが、この店もまあまあ美味い。
「アメリアが…で……の……さぁ。」
突然聞こえたアメリアという言葉に驚いた。
声の主の方を向くと組織の人間らしき人が誰かと話しているのが見えた。
「そんで、ベルモンドさんと殺りあったんだって。」
「はぁ…。感心するわ…。度胸あるなぁ…アイツ。」
アメリアだ…。殺りあったのはきっとアメリアだ…。
会えるんだ…やっと…。
アメリアは…生きていたんだ…。
『アメリアぁ……っ!』
涙が零れた。嬉しかった。生きているんだ。アメリアが。
あぁ、もう。嬉しくて嬉しくて…。
アメリアのこと以外考えられない。
そうだ、アイツらに詳しく話を聞こう…!
面倒なことになりたくないし、聞いたら殺してしまえばいい。
『あの、アメリアって今どこにいるんですか。』
すると組織の奴はキョトンとした顔で俺を見た。
「あァ?お前…」
「シックか。」
突然、額に銃を突きつけられた。
それでも俺は動じる事無く再び問う。
『どこにいるんですか。アメリア。』
すると奴らはケタケタと笑いだした。
「死んだんじゃない?アイツ。組織に乗り込んだからな。」
「腹を切り裂かれたらしい。そんで、その傷を負ったまま落とされたんだ。無事ではないだろうなぁ…!」
嘘だ。そんな程度で死ぬはずがない。
凄い殺し屋…俺の両親に殺し方を教えてもらったんだぞ。
これは挑発だ。
もういい…。自分で探そう。
『そうですか。』
「あ゛…ッ!!?」
「……ッ!?」
ナイフで首元を切り裂くと、奴らは一気に体制を崩した。
ビクビクと痙攣しながら血を吐いていた。
脈が途切れたのを確認し、俺はアメリアを探しに行った。
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丁度お昼頃。
町の中の病院へ辿り着いた。
「すみません…お腹の辺りを謝って切ってしまったのですが…」
診察室へ入ると医者が今にも飛び出そうなほど大きく目を開き、すぐに手当てをしてくれた。
「よくこれを平気でいられたもんだ…。お前さん何者だ?」
「いたって普通の女の子ですよ。ありがとうございました。」
私はニコッと微笑んで、病院を去った。
うーん…ここから先どうやってシックを探そうかな…。
手掛かりがある訳でも無し…。
考えていると、何処かから悲鳴が上がった。
「?」
こんな昼間から悲鳴なんて不思議だな…。
悲鳴が聞こえた方へ向かうと2人の男が血を流して倒れていた。
「あ…」
シックだ。
切り口でわかった。
この殺り方はシックだ。
あの家の地下室にあった死体の集まりの切り口と似ている。
まだ近くにいるだろうか。
どうやって探す?
下手に動き回るとまた会えなくなる気がする。
どうしたらいいの…。
「どこなの…?シック。」
すると、後ろから肩を叩かれた。
「おや…お前さんまさか…?!」
叩いたのはおばあさんだった。
おばあさんはまん丸の目で、そして目に涙を浮かべながら驚いていた。
「あの…どなたでしょうか…?」
「貴方…生きていたのね…っ!」
おばあさんはその場で泣き崩れてしまった。
「…!?だ…大丈夫ですか…!?」
すると泣きながらおばあさんが嬉しそうに言った。
「アメリアが…ッ…アメリアが生きていた…!」
え…。なんで…?
「ど…どうして私の名前を…?」
「どうしてって…貴方シックの妹でしょう?」
このおばあさん…もしかしたらシックのことについて何か知っているのかもしれない…!
「あの…もし良かったら…兄の…シックの話を聞かせてください!」
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夕方。
『はぁ…。』
ここ広すぎないか…。疲れてきた…。
歩き回ってもアメリアらしき人と1人も会ったことがない。
途中で町の地図らしき物を見たが、俺が歩いてきたのは5分の1ぐらいしか見れていない。
どうやらここら辺では大きな都市らしい。
そりゃ見つからないわけだ…。
都会なんて来たことがないから適当に探せば会える思ったのに…。
都会は甘くなかった。ぐぅ…。
今日は引こう…。あんまり遅いと老母が心配してしまう。
老母の家に着くとすっかり日は暮れていた。
疲れた…。
『ただいま戻りました。遅くなってすみません…』
「シック?」
この声…。
老母の声じゃない。
まさか…、
『アメリア…?』
思考が追いつかなかったが、名前を呼ぶと部屋の向こうから茶色の髪をした目の赤い女の子が現れた。
すると、女の子は俺に飛びついた。
「シック…!シック!本当にシックなのね!?あぁ…!あぁ!」
女の子は俺を抱きしめながら泣いていた。
ようやく思考が追いついた。
『アメリア…っ!ごめんな…ごめんなアメリア…っ…俺、お前を置いて一人で…っ!!良かった…無事で…!!!』
俺はアメリアを強く抱き締めて泣いた。
「いいの…。多分アイリスが行かせたんだもの。シックが無事ならそれでいい。本当に良かった。」
『そうだ…!傷…!腹の傷は…!?』
するとアメリアはふふっと笑って、
「あぁ、これ?大したことないよ。ちょっと掠っただけ。シックは大袈裟だなぁ…!」
『だ…だって!アイツらが腹を切り裂かれたって言うから…!!』
全く…心配性なんだから、と俺は笑われてしまった。
奥の部屋から老母がやって来た。
老母は目に涙を浮かべながら「良かったね。」
と呟いて俺たち2人を抱きしめた。
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