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約20年後、全員の人生でいろんなことがあった後、タカさんは癌を患い亡くなった。私たちは何度もお見舞いに行ったが、タカさんはいつもの声で
「俺はここまで生きたんだ、だからすげえんだ」と威張っていた。
「タカさんはここまで生きて、ほんとにすごいよ」
私は本心だと言うことが伝わるように、力強く言う。
「お前らはもっとすごくなれよな」
タカさんのお葬式が終わって、私はつい最近7歳になった息子、タカヒトと近くの川に来ていた。夕日が澄んだ川に反射し、キラキラ光って綺麗だった。
「タカヒト」
石の階段に座り、昨日買ってあげたおもちゃの車をいじるタカヒトを呼んでみる。タカヒトが、不思議そうな顔でこっちを見る。
「7歳まで生きるってね、すごいんだよ」
タカヒトはきょとんとした顔で私の目を見たが、いつの間にか笑顔になって私の胸に飛び込んできた。
「友花がここまで生きたのだって、すごいよ」
背後から、ずっと前から変わらない、夫の優しい声が聞こえた。
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