プロローグ

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わたしに足りないものそれはズバリ普通の女の子の生活なのだ。 毎日満員電車に揺られ会社に通勤することはもちろんアルバイトだってしたことがないのだから。 美人で美しいわたしはきっと幸せ者なんだろうけれど何かが足りないと最近思い始めた。 わたし中川英美利は二十六歳。職業は女優。中学、高校時代は雑誌の読者モデルをしていた。その時、スカウトされアイドルになり、高校を卒業と同時に女優業に転身した。 なので、わたしは芸能界の仕事しか知らないのだった。 カフェの店員さんや制服を着た事務員さんに一度はなりたかったな。そんなことを考えながらわたしは今、新幹線に揺られている。 うふふ、今日は一人で大阪の街をブラブラと歩いてみよう。 たこ焼きを食べようかな。串カツも食べたいな。誰が見ていても気にしないんだから。わたしはヨダレを垂らしそうになりながら楽しいプランを考えていると幸せな気持ちになれた。 そう、幸せな気持ちになっていたんだけど……。 「英美利、アホ面して何を考えているんだ?」 「え?」 その声に振り返るとマネージャーの浜本(はまもと)がわたしの隣に座っているではないか。 「浜本、どうしているのよ!」 わたしは、思わず大声を上げてしまった。 「はぁ? 仕事だからに決まっているじゃん」 浜本は当たり前じゃんって表情ではわたしをじっと見た。
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