プロローグ

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それから浜本はわたしの隣でせんべいをバリバリと食べ始めた。この美しいわたしの隣にせんべいなんて似合わない。 だけど、醤油の香ばしい香りがたまらなくて食べたくなってくる。美味しそうだよ。 「浜本、せんべいちょうだい」 気がつくとわたしは手を差し出していた。 「ふん、やらないよ。これは俺のせんべいなんだから」 「ちょっと浜本って意地悪だよね。それでもわたしのマネージャーなのかな?」 浜本はふふんと鼻で笑っているのだから憎たらしいよ。 「浜本ーーー! わたしを誰だと思っているのよ」 わたしがムキになり怒ると浜本は、 「はいはい。英美利様だよな。特別だぜ」と言ってわたしの差し出していた手のひらにせんべいを「ほらよ」と載せた。 「ふん。最初からくれたらいいのよ。でもありがとう」 「どういたしまして」 浜本はニヤリと笑った。 わたしと浜本はせんべいをバリバリと食べた。 ああ……。今日は撮影の前に大阪や京都を一人でぶらぶらしようと思っていたのに浜本が着いてきて台無しだよ。 わたしは、呑気な顔でせんべいを食べている浜本の横顔をギロリと睨んだ。 そんなこんなでわたしと浜本を乗せた新幹線は大阪へと向かったのだった。
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