プロローグ

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「では、失礼します」 子犬みたいな女の子は軽く頭を下げわたしの前から立ち去った。 わたしは、ぼんやりと子犬みたいな女の子の背中を見送った。 「おい、英美利」 その声に振り返ると浜本が立っていた。 「あ、浜本居たんだ!」 「あのな。それはちょっと酷くないか! ところでその可愛らしいクマ柄の財布は拾わないのか?」 「あ、忘れてた~」 わたしは慌てて腰を屈めクマ柄の財布を拾った。 「財布なんて落としてドジな奴だよな」 「まあそうだけど。でも浜本こそどうしてわたしの財布に気がつかなかったのよ。それでもわたしのマネージャーなのかな?」 「知るかよ。その買い物かごのお菓子の山に目が行き気がつかなかったんだよ」 浜本の奴は言い訳なんてするのだからぷんすかだ。でもまあいいか。浜本にお菓子の山を持ってもらわなくてはならないもんね。 わたしはくふふと笑いながらお会計に向かったのだった。クマ柄の財布に目を落とすとわたしの大好きなクマさんがニヤリと笑ったように見えた。 きっと気のせいだ。疲れているのかもしれない。今日は美容のためにも早く寝ようかな。そんなことを考えながらお会計を済ませたのだった。
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