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プロローグ
人生はメリーゴーランド。
ピカピカした馬や馬車に乗り込み、その先にある景色を想像して胸躍らせる。
きっと、その瞬間が一番楽しい。
始まりを知らせるブザー音が鳴り響いてひとたび動き始めれば、同じ場所をグルグルと回っていることに気付く。そのとき、新しい世界へ連れて行ってくれるんじゃないかという期待は、跡形もなく消える。
――柵の外でパパとママが手を振っている。
一眼レフのカメラを構えるパパと、高い声で私の名を呼ぶママの姿が一瞬だけ見えて、その出会いと別れを繰り返す。
二人が見えない時間は恐ろしかった。
次の出会いでそこにいなかったとしたら。
だけど動き始めたメリーゴーランドは、自分の意思だけでは止められない。偶然乗り合わせた人々と共に、グルグルと回り続けていく運命だから。
この命が尽きるまで――。
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