人生で1番の「おめでとう」を君に……。

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「彼女が出来た」 君のその言葉に、僕は一瞬何を言われたか分からなかった。 高校で知り合って、仲良くなって……。僕と彼は親友と呼べる位に親しくなって、大学も同じ所に通おうと思っていた。 そんな高校三年生の夏休み前。彼と、もう何度一緒に訪れたか分からないファーストフード店。 学校帰りに寄り道したり、一緒に勉強したり、休日に遊んだ際も「俺達と言えば、やっぱここだよな!」って彼の言葉でほぼ必ず訪れていた想い出の店だ。 今日だって誘われて、すごく嬉しかった。 それなのに、彼のたった一言で空気は一変した。 「……あ。そう、なんだ」 「うん」 やっと僕の口から出た弱々しい声に、目の前の彼はストローに口付け、アイスコーヒーを飲みながら頷く。 「……。 い、いつ……から?」 「ん?」 「あ、っ……いつから、付き合ってるの?」 別にそんな事聞きたい訳じゃない。 でも、胸が何かに鷲掴みされたみたいに痛み……。でも、何か言わなきゃ、と困惑した僕の口から出たのがその質問だった。 聞きたく、ないのにーー……。 僕の心の叫びが分かってもらえる筈もなく、質問された彼は彼女と付き合い始めた馴れ初めを語り出す。 けれど。 まるで僕の全てがそれを聞くのを拒絶しているかのように、耳から入ってこない。 普段ならばどんなに遠くにいても聞こえて、ザワザワした人混みの中でさえ聞き分けられる彼の声の筈なのに……。 彼が話しているのは彼女との馴れ初めなのに、僕の頭に浮かぶ映像は僕と彼のこれまでの想い出だった。 受験に失敗して、仕方なく入学した高校。 同じ中学からの友達もいなくて一人で居た僕に、前の席に座っていた彼が声を掛けてくれたのが全ての始まりだった。 最初は、問題を解く時間とは言え授業中に堂々と後ろを向いて「解けた?」とか聞いてくる態度に、なんだコイツ、って思ったりもしたけど……。いつの間にか、彼が振り向いてくれるのを心待ちにして背中を見つめていた。
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