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 先天的な血液疾患を持っていた私は、なにかと病院の世話になる機会が多かった。  小学校までは殆ど病院で暮らす日々を送っていて、中学校からは学校に通うことができたのだが、高校生になると貧血の症状が多発したため、再び病室での引きこもり生活を始めることになった。  そのことに不満を持ったことはあまり無い。私は、人と一緒に居ると疲れてしまう性分且つ、何かに黙々と没頭して遊ぶことを心から愛する人間なので、むしろこの世間から隔離された生活に満足さえしている。  そんなこんなで気楽に生きてきた私だが、最近、少し、いや、だいぶ不安なことがある。  なにかというと……、なんというか……、言葉で説明するのが難しいのだが、そう、家族の様子が可笑しい。  父、母、弟が、妙によそよそしくて、ぎこちない仕草をすることがある。  私のことが嫌いになったのか、とも思ったが、気遣ってくれたり、優しく接してくれたりすることを鑑みるに、そういうわけではないようだ。  普段はもっと、つっけんどんと言うべきか、私に似て、個人主義的な性格の人たちなのだが……。  そんな人たちが、まるで腫物を扱うかのような態度で私に接してくるのは、なぜなのか。    ……嫌な予感がする。  もしかすると、もしかするとだが……、私はもう、長くはないのだろうか?  最期ぐらい、私に良い思いをしてもらおうと、そういうことなのか……?  次、家族全員が揃ったとき、きちんと問いたださなければ……。  そんなことを考えながら病室のベッドの上で本を読んでいると、ドアがノックされたので、私は「はい」と返事をした。
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