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水を差され、やる気も無くなってしまったのでパソコンを閉じる。すると机上の固定電話が鳴った。
受話器をつかみ損ねて落としてしまいあたふたする。机から宙ぶらりんになっているそれをつかみ慌てて耳にあてたとき、その言葉はとび込んできた。
「――――おめでとうございます! 今月はあなたが当選者です!」
唐突な言葉に面食らい思考が一瞬とまる。しかし、脳に言葉の意味が浸潤していく。蓄積された憤懣に火がつき、一気に大火となって燃え上がった。
またか! 電話でもこんなことがあるのか! 俺が何をしたって言うんだ!
「いいかげんにしろ!!」
吐き捨てた言葉が想像以上に部屋に大きく響いて我ながら驚いたが、そのまま怒りに任せて受話器を勢いよく叩きつけた。
「まったく……」
椅子の背もたれによりかかり頭上を見上げて独りごつ。そして、ほてった頭を落ち着かせるべく深呼吸をした。次第に冷静さを取り戻した頭にふと疑問が差し込んできた。
「電話の声……なんだか聞き覚えがあるような……」
瞑目して頭を回転させるが出そうで出ない。ヒントが無いかと周囲を何気なく見渡す。そしてあるものを見た瞬間、絶望的な気分になった。
机の角に置かれた小型ラジオ。
さっきの俺の声が大きく聞こえたのも……。
震える手でそれを手にすると、おそるおそる耳元まで近づけた。
「――いやあ、先ほどは驚きましたねー。いきなり『いいかげんにしろ!』と怒鳴られたのは番組史上初ですよ~。悪徳なセールスかなにかと間違われたのかなー。何はともあれ、RN:運貧乏さん、合言葉をお答えいただけなかったので、残念ながら賞金ゲットならずでした!それでは――」
ハキハキとしたパーソナリティーの声が次第に遠のいていく。俺はラジオをつかんだままくずれるように机に突っ伏した。
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