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「日高さん、私は全てを把握しています。
その件に関して、前回私が説明を始めたときの事を覚えていますか?」
「あっ、とぉ」
既に記憶に無いらしい。あれだけ騒いだのに覚えて無いなんてかなりの強者だなぁ。
「アンタに何が分かるって言うんだ! と捲し立てて出ていかれましたよね」
「はい、そうでしたね」
日高は下を向くとモジモジしていた。
俺は白椿に例の物を持ってきてもらった。
一つは有名所の大きな菓子折。もう一つは封筒。それをテーブルに並べて置いた。
「日高さん、これ。何かわかりますか?」
「いえ。分かりません」
「日高さんの奧さんとお義母様がお持ちになった物です」
日高は目を大きく開いて俺を見た。
「嫁達が? なぜそんな物を持ってきたんですか? それにどうしてそんな事をするんですか!」
その言い方。全く世の中の礼儀を分かっていないこの男。幼少期から躾直さなければダメだな。
「これは鑑定代と手土産です。そして奧さんとお義母様がこれを持って私にお礼を言いにきたのです。アナタの代わりに。
奧さんは泣いておられました。お義母様はひたすら頭を下げて謝ってました。お二人にそこまでさせて恥ずかしくないのですか? 自分が仕出かした失態をお二人が謝るなんて、大人としてどうかと思いますよ?」
日高は頭を上げられないままでいた。
更に続けて説教をする。
「自分の尻は自分で拭け!」
思わず本音が出てしまった。
「すみませんでした」
「その言葉は奧さんとお義母様に言って下さい」
反省していたようなので、これからの対処を伝えた。
先ずは瀕死の愛人の所に行って謝ること。費用は全て日高が負担すること。愛人にも両親はいるだろうから、きちんと説明をして怒りの鉄槌を浴びること。現実的な謝罪と心からの誠意を見せるようにと。
化け猫の方は、一ヶ月間線香を立てて謝ること。そして許しを請う。愛人が報われれば化け猫も成仏するはず。
愛人の方は傷害事件になるかも知れない。それは当たり前のことだ。日高にはそうやって社会的に制裁を受けて反省をしてもらわなければならない。離婚は勿論、裁判にもなるだろう。当然の報いだ。
ここで俺が除霊をすれば難なく事が終わる。だが、コイツには事の重大さとその責任を負って償ってもらわなければならない。一人の人間の人生を狂わせた責任を。いや、日高に関わる全ての人に対しての償いを。
俺の幸せが台無しだ。
一昔の俺だったらそんな言葉を聞いたら、直ぐさま閻魔大王の元へ送り飛ばしてやったのに。と、煮えくり返った腹の内で思う。
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