二章

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「先ずはこの用紙に記入をお願いします。分かるところだけでいいです」  今回の相談者は、婚約者と入籍のタイミングを相談に来た優柔不断な城山(しろやま)という男性。  見た所、普通のサラリーマンで目立った特徴は無い。が、そんな城山には飛び切り綺麗な婚約者がいる。 「書けましたか?」 「はい、書けました」  初めての相談者にはカルテを書いてもらっている。名前と住所と生年月日。強制ではないので書きたく無い人は書かなくても良い。が、それを元に鑑定するので自己紹介がてら記入をお願いしている。  と、俺はその用紙を受け取って驚いた。どこをどう見ても城山には結婚の影がない。なのになぜ入籍日を見て欲しいとここへきたのか?  俺の鑑定は主に四柱推命。もっと掘り下げるなら妙名鑑定や手相を使ったりする。  人間はオギャァと生まれたときから人生が決まる、それが宿命。  生きていく上で良かれ悪かれ変えられるのが運命。 「城山さん、始めにお聞きしますね。今日は入籍のタイミングを知りたいと言うことでしたが、他に何か聞きたいことはありますか?」  城山は目を輝かせながら言った。 「子供が欲しいです。たくさん」 「そうなんですね。ではその辺も見てみますね」  俺は城山のカルテを元に年表を作る。それと同時に透視も始めていた。  この男、透視する限りでは性欲が有り余る程の男だった。そのくせ年表には子宝は無い。どう言う事だ?  先ず、年表は生年月日を元に人生の流れを導き出す。普通、平均、もしくは真ん中と言った事を表しているので、勿論変わり者だったりの例外はある。その年表には結婚すら無いと出ている。  では透視結果はどうかと言うと、性欲に恵まれて異性に困らないと見える。  その理由は城山の後に見える光景だ。この男が何人もの女性を取っかえ引っかえしながらセックスをしているのが見えた。  中でも一人の女性のだけを集中的に愛撫しているのが見える。多分この女性が城山の結婚したいと言っている人なのではないだろうか。  おかしい、何かがおかしい。俺にはこのギャップが違和感でしかない。  白椿に目をやると同じことを感じていたのだろう、二人で首を傾げた。 「あの城山さん。差し支え無ければ婚約者様の名前と生年月日を教えていただいても良いですか?」 「はい」  城山はそう言うと所々でペンを止めて考えながら書き進めた。  婚約者の生年月日ならまだ分かる。が、名前を思い出しながら書くってのはうなんだろうか?  「書けました。多分これで合っていると思います」  そこに書かれていたのは名前と誕生日だけだった。普通、結婚となればお互いの年だって気になるだろう。 「えっと、多分合っているというのはどの辺なんでしょうか」 「はぁ。ごめんなさい、あんまり覚えてなくて」 「そうなんですね。分かりました」
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