二章

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 この異世界に来て気付いたことが二つある。  一つは、子供達が皆同じ顔だと言うこと。  二つは、武士、金、子供、女意外何も無いこと。  一つ目の子供に関しては、産んだことも無ければ育てた事も無いので、自分の子供がどんな物なのかが分からないのだろう。  二つ目は、自分の欲だけの世界。要するに必要ない物は省いたって事。だから両親や町人がいないのはそのせいなんだろうな。  これぞ理想の世界。だが、完全なる幻想の世界だ。  子供達を家屋に入れると、偽城山は遠巻きに俺の事を見ていた。キリッとした細い目は瞬きもせず睨み付けてくる。そしてこの距離にも関わらず殺意が伝わってくる。  本気で挑まなければ、俺がやられる。  偽城山は腰にぶら下げていた刀の(つば)ギリギリの所を握ってゆっくりと引いた。  これは本気で来るな。  この異世界で刀を振り回しても当たるはずが無い。しかし、ここは偽城山が作り出した本人英雄の世界。そしてその偶像を崇拝する偽物の家族。そんな偽城山のフィールドで戦わなければならないとは。  俺も腹を括るしかないな。  偽城山の刃先は確実に俺を捉えている。 「穏やかに成仏しようと言う余地はないのか。己が戦うと言うのなら応戦しよう」  偽城山は刀を握り直す。 「オレノセカイ」 「ここはお前が作り出した幻想の世界だ。現実を理解し成仏するがいい」 「ジャマモノハコロス」  和解成立とはいかなかった。俺は迎撃の準備に入る。  俺と偽城山は距離を置いて向かい合う。その気迫に周りの光景が薄れていく。  そこは薄暗い平地の真ん中。偽城山の袴が風になびく。  俺は印を結び結界を張る。が、怨念の強さにこの結界が持ち堪えてくれるか否か。でもやるしか無い。  偽城山が攻撃をしてきた。振り降ろした刀の先から気孔の刃を放つ。  それが結界に当たると鈍い音と共にヒビが入り地面に転げ落ちた。  次は結界を破られる。  俺は結界を補修しながら反撃する。  右手で印を。呪文を唱えながら左手で波動を打つ。  偽城山は呪文で弱ってきているのは分かった。あとコイツらが嫌いな煙さえがあればと思っていると、どこからか白檀の香りがしてきた。  この異世界にはいない白椿が現世界で白檀の線香を焚いてくれていると確信した。  見るからに偽城山は弱っている。  安らかに成仏してもらいたかったが、この状況では仕方が無いと判断する。  本当はこんな事はしたくはなかった。  除霊、そして偽城山に対する魂の抹消。 俺は弱った偽城山に向けて手をかざす。そして呪文を唱えながら天を仰ぐ。 薄暗い空が光に包まれ稲妻が雲を裂いた。その切れ目から俺の相棒が姿を現す。
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