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「愛はありますよ。あの時心配してくれた事、本当に感謝してます」
白椿は納得がいっていない様だった。
「先生、では恋愛禁止の意味は何ですか?」
「他所では師弟関係で恋愛してもいいんだよ。でもここでは修行に集中してもらいたいから恋愛禁止にしたんだ。それに、修行中に恋をすると散漫になって一人前の霊能者にはなれない。それに白椿のご両親に叱られてしまう。そして俺が掛けた魔法が解けてしまうからね。お前を守るためでもあるんだよ」
白椿はフフッと笑うと俺のことをからかうような言い方をしてきた。
「先生はロマンチストなんですね。でも大丈夫です。私はその魔法が解けても先生を好きになったりはしませんから」
今世紀最大のショックだ。これは立ち直るまでにかなり時間が掛かりそうだ。
「先生、話しを戻しますけど、なぜ城山様の婚約者さんの画像があったのですか?」
「数日前にここに来ていたんだよ、婚約者の旦那さんが」
「え?」
「嫁が浮気をしているのではないかと疑っていたらしい。子供を親に預けて出歩いているのを不思議に思ったのだろう。
探偵を雇うほど金も無いし、悩んだあげくここへ来たわけ。ここに来れば透視をしてもらえるからね、その選択も間違いではないけど」
「こんな偶然ってあるんですね」
「そうね」
俺はお茶を飲み終わるとテーブルにそっと置いた。
あの時、婚約者の旦那が来たときの事と、城山の亡くなったお母さんがアクセスしてきた時のことを思い出していた。
婚約者の旦那が来た時の事、その開口一番に腹が立った。
「ウチの嫁が浮気をしているみたいなんですが、どうにかなりますか?!」
その真剣な想いは分かるのだが、人に尋ねる時はもっと違う言い方ってのがあるだろうが。どうにかなりますかって、俺が何とかしなきゃならんのか?!
「占いよりは探偵を使った方が確実かと思いますよ?」
「小さな子供もいて家も買ってしまっているので、そんなお金が無いんです」
「私は占い師なので離婚調停になった時、何の証言にもなりませんよ?」
「分かってます」
本人曰く、妻を信じる気持ちの方が強いので、現実を突き付けられるのが怖かったのだそう。気持の整理が出来たら探偵を雇うつもりでいる、なんだそう。
その時、婚約者の透視をするために画像をもらった。
その日は、奧さんは浮気をしていますと言った話しで終わった。それが浮気なのか本気なのかは分からない、と少しだけ曖昧にして帰らせた。
信じていた人に裏切られた衝撃は計り知れない。その大きさも個人差があるだろうが、傷を負ったことには変わらない。そんな見えない傷を負わせて平気でいられる神経が理解出来ない。
偽城山も言葉巧みだったのかも知れないが、それを受け入れてしまった方も罪悪感は無いのだろうか。
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