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そして別の日。電話での予約の時、城山の意識の中に城山のお母さんが現れた。
ずっと泣いていて、自分の息子が心配でたまらないと言った様子を俺に訴えてくる。
「城山さん、失礼ですけどお母さんはご健在ですか?」
「はぁ、去年亡くなっております」
「そうですか」
そして、これまでの経緯をサブリミナルで見せてくる。母の力は偉大。どうしても守ってあげたかったのだろう。
では、なぜ俺にアクセスできたのか?
理由は、嫁だから。
嫁はその家系とは血の繋がりがないので、本家からの監視が低いわけだ。
そうやって色々な物が多方面から引き寄せ合って、一つの塊が出来る。
それは良い物なのだろうか?悪い物なのだろうか?
いずれにせよ育ってみないとわからない。
数日して、リビングのスイトピーの花びらが散った。
「白椿、花が!」
モップをかけていた白椿は、そのまま床の掃除をしながらテーブルまで来た。
「花びらが全て落ちましたね」
「サヤエンドウはまだ成らないの?」
「まだですね」
色気のないスイトピーを挟んで二人で観察をする。俺は早くサヤエンドウを見たかった。
ニッコリ笑いながらスイトピーを眺める白椿の顔。こんなに子供みたいな顔をする時があるんだと思うと、まだまだ女の子だなぁと微笑ましくなってしまう。
俺は花の真ん中にある変形した雄しべを眺めていた。これがサヤエンドウになるなんて、とドキドキワクワクで観察をする。
その向かいで白椿が俺を見ていたようだった。
スイトピーの茎越しにふと目が合う。
白椿は一瞬で目をそらして三時の方向を見る。
その顔は赤く火照っているようだった。
「えっとぉ、俺、何かしたかな?」
「何でもないです」
そう、冷たくあしらわれて寂しくなった俺。
「白椿?」
「何でもないですってば!」
「なんでそんなに怒ってるの?」
白椿を追い掛ける俺の足元を、執拗にモップで突いてきた。俺はそのまま中庭へ出されてしまった。
その一部始終を見ていた大和。助けを求めたが、さすがに大和はそんな事はお構いなしで尻尾を振ってくる。
「大和ぉ。何とかしてよぉ」
そう言って頭を撫でると、尻尾が千切れそうなくらいにフリフリして俺に絡んできた。そしてひとしきり戯れる。
「しかしお前は可愛いなぁ」
芝生に倒れた俺の顔をベロベロなめ回す大和。
「頑張ったご褒美は、オエッてならないガムにしよう」
そう言って大和のおやつを取りに行こうとしたら、サッシを閉められていた。
「締め出された。えっ? 俺、本気で何かしたかな? 白椿ちゃん? ねぇ開けてよ!」
元気いっぱいの大和が俺のズボンの裾を噛んで遊び始めた。
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