三章

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「主人は毒を飲みました。と言うよりは飲まされたと言うのが本当かも知れません」  俺と白椿は見合った。  白椿は首を傾げている。  俺の中でだいたい予想は付いた。 「それは娘さんですね?」 「はい。ですが、主人は死ぬ前に誤飲をしたと苦しみながら近所の方に言ったそうです。そう隣の奥様に聞きました」  白椿は少しだけ俺に寄った。突然の告白に嫌な空気と恐怖を覚えたのだろう。 「私は、主人がそう言ってあの世へ行ったのだからそれを覆すつもりはありません。ただ、なぜその様なことになったのか知りたいんです。主人と娘の間にどんなトラブルがあったのか知りたいんです。  それが分かれば、主人も成仏出来るのではないかと思っています」 「この事を誰か他にも知っている人はいますか?」 「おりません。自分の娘を犯罪者に仕立てようなんて親は、どこにもいないと思いますから。  もし無理な様でしたら、この話は聞かなかった事にして下さい」 「大丈夫です、秘密は厳守します」  今回の相談者は除霊を目的とはしていない。死に至った理由と解決。その上で成仏してくれれば良いと言う希望だった。  では、この家系はなぜ男児が産まれても亡くなってしまうのか? 必ず理由があるはず。と考えた時、必然と透視以外の能力を使わなければならないと考えていた。  俺的には気になる所は山ほどあったが、先ずは相談者の希望を優先して、それでも解決しない場合は施術を考える。  己の気持を整えてから透視を始める。 目を閉じると直ぐに熱さを感じた。火事だ。この屋敷は一度火事に見舞われている様だった。逃げなれない子供の長男を助けに入り、その時に春江さんは体の一部を火傷した。残念ながら長男は既に息絶えていた様で、春江さんが泣きながらその子を抱えていた。 真次さんが赤ちゃんを沐浴している。どうやら産まれたばかりの娘らしい。この子が後に毒を盛ることとなる人物。俺にはそう見えた。 場面は変わって直近の出来事らしい。娘が就職して家を出ていった。それを寂しげに見送る夫婦は、娘が見えなくなってから泣いていた。 暗い部屋で真次さんが渡された飲み物。死ぬとわかっていて飲み干した。しばらくすると苦しくなり、もがきながら外へ出た所で近所の女性と出会う。 真次さんにその飲み物を渡した人は、娘だった。しかもその娘とは、日高トオルの愛人で瀕死の状態になった女性だ。
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