三章

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 段々と繫がってきた真実。解されてきた糸。誰がどこまで信じるか、誰が何を白状するのか。結末はまだわからない。  ゆっくりと俺の透視に紛れてきたのは真次さんだった。 「真次さん。あなたはなぜ成仏しないのか」  その問いに対して険し表情で答えた。 「ユルサナイ」 「それは誰を許さないのか」 「アノオトコ、ユルサナイ」  これは日高の事を言っているに違いない。  盛られた毒を自発的に飲んだ事からして、娘を恨んではいないようだ。だとしたらなぜ日高を恨むのか?   もう少し深く探ってみよう。  再び真次さんからイメージが送られてきた。 町で日高と肩を並べて歩く娘を見掛けた真次さん。微笑ましく眺めていたようだ。 また別の日。今度は日高が子供を連れた女性と買い物をしているところを見た。明らかに夫婦だ。 娘が不倫関係にあると察した真次さんは、娘を問いただす。するとやはり妻子持ちの男が相手だったらしい。。就職してわざわざ家を出たのは、その関係を知られたくなかったから。 そして金銭を揺すられた娘。自分の貯金も給料も全てむしり取られた娘は、日高にこう言われた。親が金を持ってるだろ? 殺して金を作れ。 それをわかっていた真次さんは騙された振りをした。  俺は悲しくなって目を開けた。白椿も悲しい顔をして俺を見た。  日高を成敗して制裁を科することは俺達のする仕事では無い。それをどうするかは春江さんと娘さんが決めることだ。  今の透視を一通り春江さんに伝えた。 「そうだったんですね。辛かっただろうに」  そう言って春江さんは涙をこぼす。 「娘は幸せだと言っていました。私は、愛する人と幸せに暮らしていると言う娘を信じるしかなかったんです。  でも本当は幸せなんかじゃなかったんですね。もっと早く気付いてあげてればこんな事にはならなかったのに。悔いが残ります」 「春江さんは、その不倫相手に会いましたか?」 「会ってはおりません」  俺と白椿は目を合わせた。日高は謝罪をしていなかったのだ。つまり謝罪が無いと言うことは、あの化け猫も成仏していないと言うことになる。  ここまで来ると、誰を擁護して誰を成敗するのかがわからなくなってくる。 「困ったことになりましたねぇ」  思わず本音が出た。  これだけの期間、化け猫をほったらかしにしたら、随分と成長しているに違いない。  化け猫とはいえ、魂の消滅だけは避けたい。だからお利口にしててくれと願うばかりだ。
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