四章

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四章

「殺したい人がいる」  開口一番が凄過ぎてドン引きした。  その相談者は俺が中学の頃の同級生。だから面は割れている。そしてコイツからは酷いいじめを受けていた。だから俺からしたら良い思い出は全く無い。  そんな奴を見てやらなければならないなんて気に入らないがこれは仕事だから仕方がない。  因果応報とはよく言ったものだ。コイツが今までどんな事をやってきて何をされてきたのか。  そんな、ヤったらヤられると言う見えない巡りの世界のお話しをしたいと思います。  中学の頃、酷いいじめを受けていた俺。と言っても感じ方は人それぞれ。  その行為を、たいしたことないと思う人と、死にたいくらいに辛いと感じる人と二通りある。  その違いの差は、考え方の違いや器の大きさ。生まれも育ちも違う人の感じ方が同じ訳がない。それらを考えるといじめは大小関わらずいじめに変わりはない。  何をされたのか、何を言われたのかは覚えていない。と言うより全てではないが記憶から消したのはこの俺だ。  人間の頭はうまく出来ていて、嫌な記憶を消してしまう機能が備わっている。医科学的に言われているのが解離性健忘症(かいりせいけんぼうしょう)だ。これはあまり良くない現象と言われているが、俺からしたら都合の良い現象だ。  本来は過去の記憶に遡り解決するのが人道的には良い方法だとされている。  俺のいじめについての内容は人事のようにふと思い出す時がある。あまり良い物ではないので言わないでおこう。  そんな時期を経て今の俺がいる。そんな辛い時があったからこそ霊能者としての俺がいる。人の空になった空間に霊能力が住み着くとも言われている。俺の場合は正しくそれだ。 「人を殺しても良いことないですよ」 「オレは何もしていないのに、何でこんな仕打ちを受けなければならないんだ! みんな殺してやる」  今回の相談者は新奥秀文(しんおくひでふみ)。  職場で何か嫌なことがあった様だった。  恨む相手を直接殺めるのも良いだろうが、そこまでの勇気は無かったらしい。  霊能者に頼れば、もしかしたら呪い殺してくれるのでは無いかと考えて俺の所へ来たって訳だ。  顔を合わせて驚いた新奥は、同級生だとわかると殺しの依頼をしてきた。  俺はスナイパーでは無いんだがな。仕事だから話だけでも聞いてやろうと広い心で対応する。
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