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生きていたら良いことあるよ。でも必ずこの時の感情は思い出す。そして辛くなったらどうやって乗り越えればいいのか? そんな切なさだけが未遂を苦しめる。
俺はこの男が何をしてきたのかだいたい把握した。が、俺の仕事は新奥に対しての制裁ではない。相談者の要求は指定された人間を呪い殺せ、だ。
では新奥の望む通りにしてやろうじゃないか。その前に、今現状を見て感じてもらおうと過去のM子と入れ替えてやることにした。
時は、風鳴りの響くビルの屋上。自殺をしようとしているM子と入れ替えた。
新奥は急に目の前に現れた暗闇と風の音に驚き逃げようとする。が、体は自殺をしようとしているM子の物だから新奥の意思では動かせない。
「たすけて」
そう言ってみるも声にならない。
不安定に吹いてくる風は、ビルの縁に立つ新奥を揺さぶり続ける。
M子の脳内は、死ぬ間際の辛かったことや楽しかった思い出を回想する。それを同期している新奥もその回想を見ている。
小学校の頃は楽しかったな。あの頃の新奥君は優しくて、行動班で協力してクリアする課題が本当に楽しかった。
いつからか私がいじめられる事になったのは、どんな理由なのか原因なのかはわからない。ただ、私は仲良くなった友達が大切だっただけなのに。
我慢して見ない振りして、気が付くと周りには誰もいなくなった。私一人だけの学校生活。
そしていじめ。
机にゴミ、椅子にチョークの粉。
掃除の時間になると、みんなが私に掃除用具を持たせに来る。
配布物をもらえない。
給食が無い。
上履きを隠される。
ロッカーの私物はいつも無くなる。
教科書をゴミ箱に捨てられる。
最後に言われた言葉は、死ねば良いのに。
だから私はみんなのために死にます。
そして新奥君、アナタを呪います。
回想を見た新奥は体の震えが止まらなくなった。たすけて、たすけてと口を動かすが声にならない。
風に押されて体が揺れる。その体は落ちないようにと必死にバランスを取る。
するとM子の体から幽体離脱のようにM子だけが抜け出した。
M子の揺れる体を直ぐ側で眺めてニヤける幽体M子。
ゆっくりと振り向いた新奥は幽体M子を見てビクッとなった。
「シンデシマエ」
幽体M子がそう言うと、ゆっくりと近いてくる。新奥は恐怖のあまり気を失いそうになる。
そして幽体M子は縁に立つ自分の体を強く押した。
新奥の目にはスローモーションの様に周りの景色が流れていく。後から前へ、光から闇へと落ちる。
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