四章

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 明日の打ち合わせを兼ねて二人で話を始めた。  俺はいつもの椅子でいつもの位置。自分で入れたり紅茶を飲んだ。この斜向かいに白椿がスケジュール帳を持って座る。 「休む時間なのにごめんね。打合せと今後のことについて話しとこうと思って」 「はい」 「明日の予約は午後の一件のみで、その後は未定。で、その予約を白椿にしてもらおうかと思う」  白椿は驚きもせず喜びもせず真剣な顔で聞いていた。  明日の相談者は定期的に来る女性の客だ。白椿も知っていて扱いやすいと思った。  それに何かあっても、その後の予約はないので対処できると踏んだ。 「予約の方は、岩塚薫(いわづかかおる)さん。半年に一度、定期的に来てくれるんだけど、白椿も何度かお会いしてるよね」 「覚えてます」 「じゃぁお願いするね。いつものメニューだから問題は無いと思うから」  心なしか白椿は緊張しているようだった。初仕事になるわけだから、それは緊張もするだろう。  一通りの資料を渡して席を立とうとすると、白椿に呼び止められた。 「先生」 「どうした?」 「聞いてもいいですか?」  俺は椅子に座り直す。さっきと違って緊張ではなく心配も混じっていた。 「私はこの仕事をするためにここへ呼ばれたのだと思っています。と言うか引き寄せられたのだと思っています。  私が一人前の鑑定士になったとしても、先生の様に完璧な仕事は出来ません。それに私には大和もいない。相談者と共倒れしてしまうかも知れないと思うと怖いです」 「確かに。まだ恐怖の方が強いんだね。  今はまだ俺が付いているから大丈夫だよ。少しずつ慣れていけばいい。そして自分の力を信じて自信を付けるのも大切なことだよ」  白椿は少しだけ笑った。 「俺達は魔法使いじゃない。霊媒師でもない。ただの占い師だ。いつも言ってるだろ? 霊媒師一歩手前だって。  除霊をするのは自分の身を守るためなんだよ。それに大和が力になってくれてるから俺達は助かってるんだ。俺も一人で出来るようにならないといけないんだけどね。  実際の話し、動物の方が寿命が短いからいつまでも大和に頼るわけにもいかないからね。俺も精進だよ」  そう言って自分で淹れた紅茶をすする。  あまり美味しくなかった。 「温かい紅茶、淹れてきますね」 「ありがとう」
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