五章

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 ずっと耳鳴りがするこの場所はその本性が作り出した空間で、俺等からしたら完全なアウェイだ。今回は白椿もここにいる、現世で助けてくれる人はいない。 「センセイ、ダイジョウブデスカ?」  白椿がそう言うが、明らかに本人ではない。本性め、白椿に寄生したな? 「センセイ、ダイジョウブデスカ?」  俺は印を結びながら答えた。 「お前は誰か」 「センセイ、ダイジョウブデスカ?」 「お前は白椿ではないな? 俺は、お前は誰か? と聞いている」  白椿の体に寄生した本性はまだシラを切るつもりでいる。  この世界はかなり淀んでいて、強い怨みの念を感じる。誰に対しての念なのか、いつの事なのかはまだ分からない。  そして白椿の優しい性格が徒となり、相談者の話を聞き入ってしまったところを呑まれた。  呑まれてしまったことは仕方がない。無事に現世へ戻るにはどうすればいいのか考えなければならない。さぁどうする俺。  攻撃して消すのは容易いことだ。だが、今攻撃したら白椿まで傷付いてしまう。多分その事をわかっていて白椿に寄生したのだろう。頭を使ってきたな。 「白椿に寄生している物よ答えろ。お前は誰だか」  しばらく間を置いて喋り出した。 「オレハレイノウシャノタマシイヲクウ」  これは厄介な奴が来たな。 「なぜ霊能者の魂だけを喰うのだ」 「レイノウシャツヨイ、クッテツヨクナル」  己はもののけか。霊能者を喰ってもお前自体は強くはならんぞ。 「教えてやろう。今お前が寄生してるのは霊能者ではないぞ。喰っても力にはならん」 「ツヨイ、コイツハツヨイ」  白椿はまだそれをコントロール出来ないだけで、俺とは違う別の強い力を持っている。見透かされてたってわけか。 「では聞こう。一人前の霊能者ではなくても良いというのだな?」 「ツヨイタマシイヲクウ」 「その力をコントロール出来ない人間を喰ったらどうなるかわかるか?」  考える頭はあるようでしばらく黙った。でも答えは出なかったようだ。 「そんなに喰いたいのなら俺を喰うが良い」  白椿がゆっくりと別れて二重になり、二人の白椿になった。片方は白っぽく、もう片方はドス黒かった。 「オマエヲクッテ、ソイツモクウ」  黒い白椿が偽物だと直ぐにわかった。なぜなら、あの時、俺を見ていた目をしていたからだ。白い白椿は、芝桜の前で俺を見ていたあの時の目をしていた。本物はこっちだ。
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