五章

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「今からやることの流れを説明する。先ずは一度、ここの結界を解く」 「え? 先生、大丈夫なんですか?」 「わからない。でも、このままでは結界の中で本性を守っていることになる。この結界を破らずして入ってくるとは、たいした代物だと俺は思う。  その後に再び結界を張る。白椿には、無駄な物が入ってこないように守っていてもらいたい」 「私がですか?」 「そう。その方法は今から教える。一発勝負だから確実に仕留めてもらいたい」  白椿は不安そうな顔をしていたが、説明をしていくうちに勇気溢れる戦士の様になった。  今結界を解く事はかなりのリスクがある。  ここには迷った魂や低級霊が救って欲しいと寄ってくる。そんな中で結界を解いたらその波に吞まれてしまうかも知れない。  それにこの結界の中では、本性自体を守っている状態になっている。理由があってここへ侵入してきたのだろうから何か仕出かすに決まっている。良からぬ事が起こる前に決別したいと考えていた。  中庭に簡易の祭壇を設け手早く準備をする。本性は既にこちらのやることを分かっているだろう。姿を眩まして意識を殺しながらいつ攻撃をしようかと伺っているはずだ。  だがそんな散らばった意識が少しずつまとまってきているのがわかる。俺はどのタイミングで結界を解くか迷っていた。  昨日と比べてザワつきが増してきている。早くしないと面倒なことになるかもな。 「では白椿、始める」 「はい」  精神統一してから呪文を唱える。  中庭は敷地の中心であり心臓でもある。その中心で印を結び結界の効力を弱める。  両腕を高く上げ天に向かって手の平を広げる。気を吸収しその塊を地面に勢いよく叩き付けた。  今まで見えていなかった建物全体をドーム型に覆っていたシールドが濁り始め、少しずつヒビが入りパラパラと落ちてくる。  今度は大量の水気を地面から吸い上げると、それを高く高く天に飛ばした。 「こい!」  遠くから風鳴りがする。それが近付いてくるとその後を追うように震えながら地鳴りがする。  俺は高く上げた手を勢い良く水平に降ろした。  サワサワ、サワサワ。  頭上には拳大の水が揺らめいて見える。それは遠くに見えるだけで物凄い速さで落ちてくる。  段々と近付いてくると、その塊は敷地を丸々と覆うほどの大きな水の塊。  俺は地に踏ん張りそれを体全体で受ける。  地面で弾けた水の塊は、悪い気を巻き込みながら地を這うように流れて消えた。  直ぐさま印を結び呪文を唱える。今度は新しい結界を張る。  俺の足元から柔らかな光が生まれ段々と大きくなり、半円を描いたシールドが建物全体に被さる。
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