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六章
「はぁっ!」
俺は飛び起きた。怖い夢を見ていたらしい。着ていたシャツを脱いで床に投げ捨てた。
夢の内容は既に忘れた。嫌な感情だけが残る。そして背中がチクチクしていて気持ち悪い。
怖い夢の原因はシャツにチクチクした物が付いていたようで、それが何だったのかは脱ぎ捨ててしまったから分からない。そいつが悪夢を呼んだのだと思い脱ぎ捨てたったわけだ。
しばらくすると心配した白椿が扉の向こうで声を掛ける。
「先生? 大丈夫ですか?」
不機嫌極まりない状態と寝起きの俺は、返事を返すことが出来なかった。すると白椿が扉を開ける。
「もぉっ!」
半裸姿を見て、またかと言わんばかりに怒って出ていった。
いやいや、これはたまたまだから。
何でいつもこんなタイミングなんだろうと頭を抱えてしまう。
夢に出てくる人物や物が、何かを訴えてくると言ったことはまれにある。予知夢や正夢も同じだろう。それを夢で済ますのか向き合うのかは本人次第。
人は一晩に三つ夢を見ると言われている。レム睡眠の中で夢を見て記憶をする。が、無意識で見る夢を覚えていられる訳が無い。記憶に残っている夢は、目覚める寸前の物だったのだろうだろう。
それに俺みたいな仕事をしている人は、相談者が無意識で入り込んできたり、その関係者が俺に訴えたくて入ってきたりする。おまけに今回のようにチクチクで怖い夢を見ると言った場合もあるわけだ。
ゆっくり眠りたいなぁ。
以前、修行の一環で夢鑑定をしたこともあったが、あれは自分の体力と寿命を縮めているのではないかと思い断念したことがあった。
夢鑑定とは、依頼者の求めることを探るために遺品や私物などを使って夢の中で接見をする。見た夢を忘れないうちにメモる。また寝る。メモる。また寝る。メモる。終わらない。そして寝不足。
依頼者の見ている夢に入り込む修行もしたことがある。が、それは爆睡してしまってただの昼寝になってしまった。そりゃぁ、寝不足でこれをやったらグッスリ眠ってしまうだろう。
今回の相談者は夢に関する相談だ。小さい頃から不思議な夢を見続けている、と言った内容。
良かれ悪かれ夢は夢。些細なイメージでもその思いをくみ取って理解して本人に伝えてあげたい。そんな橋渡しのような心温まる出来事を、今回の章を通して皆さんにもお伝えできればと思います。
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