六章

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 生まれ変わるとは転生とも言って、魂が人間界に降り立ち修行すると言う意味。この魂やら転生やらを信じていない人は、聞いていてもさっぱり意味が分からないだろう。 「生まれ変わりとは色々な考え方がありますが、私のお教えは全く違う魂が宿ることはありません、と言う事なんです」 「え?」 「日向さんはお嫁に行って日向の名字になりましたね? 里穂さんは今、二つの家系を背負っています。日向と旧姓の二つを。その旧姓の家系の生まれ変わりがこの世に生まれ落ちたいと願っています」  里穂は複雑な顔をしていた。その後で白椿は自分の腹部をさすり始めた。 「里穂さんのお母さんに水子ちゃんがいませんか?」 「はい、私の下に一人います」 「里穂さんに会いたくてたまらないようですよ」  それを聞いた里穂はニッコリ笑った。 「嬉しい。本当は弟が欲しかったんです。母は産みたかったそうですが、経済的に無理だと判断して堕胎しました。祖父が猛反対して強制的に堕胎したそうです。お祖父さんの子供ではないのに」 「昔は祖父母の力は偉大だったからね。言う通りにしなければならなかったんじゃないかな」 「私は弟がいないことを恨みました。弟を殺したことを、そしてお祖父さんを恨みました」  里穂は弟にかなりの執着があると見た。  もしかしたら、堕胎した時から里穂に憑いていて会える機会をうかがっていたのかも知れない。そう考えると納得が行く。  俺は白椿が気になった。具合でも悪いのかなと思ったがそうではないらしい。 「白椿、どうした?」 「何だか、お腹がモコモコするんです。もしかしてコレって」 「そうかもね」  女性の占い師によくあるのが相談者が妊娠していたり、その可能性があると子宮辺りがモコモコと動きを感じると言う。今回は男の俺では用が足りないので、白椿にその体感があったのだろう。  白椿は俺の顔を見て、寂しそうなオーラを醸し出していた。なぜだろう。 「遅かれ早かれ四人目を授かることになるかも知れませんね。それまでに旦那さんと話をしておかないと」 「そうですね」 「産まれてきた子は、お姉ちゃん達と比べて格段に可愛いですよ。その理由は、みんなで育てることが出来るから。お母さんだけが苦労する時期は過ぎましたから」 「どういうことですか?」 「お姉ちゃん達が小さなお母さんって事です」
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