六章

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 それから四人目の妊活に励んだ里穂は、半年間頑張るもなかなか授かることが出来ず諦めた。そして諦めたその次の月に妊娠がわかった。妊活ってこんなに大変で辛い物だったんだなと後日談。  それもそのはず、上の三人の子供は年子でポンポンポンと産まれたから妊活の苦労は全くなかったらしい。  その日の仕事を終えて次の日の資料集めをしていると、白椿の寂しそうな顔が目に入った。 「白椿どうした?」 「先生。私」  かなり深刻な模様。 「胎動は自分の赤ちゃんの時に感じたかったです。  あっ、今蹴った! とか、旦那さんと喜びたかったです」  俺はそんな白椿を可愛く思った。女の子だもんな、こんな経験はまだ早かったかな、と反省する。 「ごめんよ白椿、気が回らなくって」  それくらいのことしか言えなかった。 「先生? もし私が妊娠するとしたら恋愛をするって事ですよね」 「そうね」 「先生の掛けた魔法はどうなるんですか? やっぱり解けてしまいますよね?」 「解けてしまいますねぇ。その前に、旦那さんが現れるか心配ですが」 「私には魅力が無いって事ですか?」 「違う違う、恋愛は一人前になったらすれば良い。だから早く独り立ちさせてやりたいのは俺だってそうだし、ご両親だって同じだよ。  それにこんな二人きりの施設で未来の旦那様に出会えたら奇跡なんじゃないかなって思っただけだよ。それとも俺が旦那様になりましょうか?」 「それは、」  俺は本気の冗談だった。つもりだったが、白椿は言葉に詰まった。 「バカにしないで下さい!」  やっぱり怒られた俺。一人前の霊能者になるまできちんとバックアップしなければ。それが俺の使命だから。  それからしばらくして里穂の四人目が産まれた。誕生日は亡くなった祖母と同じ日だそう。これも何かの縁なのかな。  産まれた赤ちゃんは想像以上に可愛い男の子で、お姉ちゃん達も一緒に世話をしてくれるので里穂の体も休めるらしい。  逆にお姉ちゃん達に妬きもちを妬いてしまい、赤ちゃんの取り合いになってしまうんだと。なんと微笑ましい。  四人目を産んでからあの怖い夢は見なくなった里穂。子供達と一緒に成長して大人になって母親になる。成長に終わりはないと思う。  きっとあの夢は、お祖父さんが里穂に託した思いだったのかなと俺は感じた。 「なぁ白椿。明日買い物行こうか。洋服を買い足そうか」 「先生もですか?」 「俺も新しい服、欲しいから」 「では、パジャマは要りますか?」 「だから、それは要ります! 背中にチクチクしたのがあって、気持ち悪かったから脱いだんです!」  やっぱり俺は今でも全裸で寝ていると思われているらしい。
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