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七章
「先生? 昨日、買い物に行った時にキャッチセールスにあったんです」
「そうだったの?」
久々にショッピングモールへ行き、その時に白椿はキャッチセールスに遭遇。多分俺が白椿とはぐれてしまった時の事だろうと思う。二人で行動していたつもりが、これ可愛いじゃん的に話しかけたら白椿がいなかった。一人で喋り続けていたって訳ね、恥ずかしい。
「お姉さん、こちら興味ありますか? 今日は一人ですか? 彼氏と一緒かな? あっ、ご主人と一緒ですか? って言った所で先生が来たんです」
「あぁ、あの人か。キャッチだったんだ。何のセールスだったの?」
「石です」
「は? 石?」
美味しいであろう水とか、有難いであろう数珠とか、超光速かも知れない通信機器ならまだわかる。が、石のキャッチは初めて聞いた。
「はい、石です。要らないって断りました」
その心意気、白椿の返答はキャッチセールスのお兄さんにセールスさせる隙が無い程の即答だったに違いない。可哀相に、そのお兄さん。
「先生!」
完全に心を読まれている。無駄な詮索はしないでおこう。
「それってブレスレットとかだったの?」
「そうですね、ブレスレットとかペントップとかだったんですけど、あまり興味が無かったので断りました」
「さすが白椿。お洒落な奴だったら買ってあげたのに。ネックレスとかしないの?」
「先生が買って下さるなら喜んでつけます。ダイヤのネックレス買って下さい」
「へ?」
石は石でも、それは旦那さんに買ってもらって下さい。俺が買ったらおかしいことになってしまうから。
そうは言っても、いつも頑張ってくれているご褒美に何か欲しいものを買ってあげようかなと思った俺だった。
石にまつわる話は沢山ある。墓石もそうだが、石に魂が宿るとか道祖神として石が奉られるなど、良い話も悪い話もある。
昔はダイヤモンドやエメラルドの採掘量がかなり多く、大きな塊ほど高く取引されていた。その一粒で一生暮らしていけるくらいの金額、まさに一攫千金とはこの事だ。その為、採掘に執着し過ぎてその石に取り憑いてしまった採掘者も多い。
今回はそんな高価な石と、河原の石に関する不思議な体験をした小川中と言う相談者の話しをしようと思います。
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