七章

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「子供が亡くなると親は河原へ行き石を積む。それは亡くなった子供が早く楽になるようにと言った親の願いなんです。  親より先に死んだ子供は五逆罪と言って大変重い罪を課せられます。子供が亡くなったことで、生きている親を苦しめると言った所でしょうね。  子供は、賽の河原で功徳を積むと称して石を積むのですが、積み方が汚いと言って鬼に壊されるんです。積んでは壊され、積んでは壊され。手から血が滲み、石に擦れたところから血が滲み。  お母さん助けて。  お父さん助けて。  お腹がすいたよ。  でも誰も助けてくれないんです。お父さんもお母さんも違う世界に居ますかなね。  そして現世では、そんな子供の為にお母さんが河原で石を積んで手助けをしてあげるんです」   「そうなんですね」 「お寺は何かと石が集まったり集められたりするので、もしかしたらその時の石だったのかな? と思います。  実家の寺院さんの奥様はそれをわかっていたのでしょうね。この石が子供だったと言うことを」 「私、もっと早く気付いてあげていたらと」 「それは違います。あの石の子は小川中さんの子供ではないですから。手助けをしてあげただけで、それだけで十分ですよ」 「そうでしょうか」  しくしくと泣いている小川中は心を痛めているようだった。 「寺院では朝晩きちんとお経を上げて下さっています。でも、お年を召した寺院ではそれが出来ない場合もあります。供養は亡くなった方の癒やしであり痛みを和らげてくれる特効薬です。その方の幸せを願い、早く転生出来るようにと」 「そうなんですね。確かに息子の遊んでいたお寺の和尚さんはお年を召していて」 「お寺も霊の世界も色々あるんですよ、きっと」  親より先に逝くとはどういったことなのだろうか。なぜ罪を課せられなければならないのか。  そもそも人間はポツリと生まれ落ちることは無い。体に宿った魂は、母親の血と肉で大きくなりこの世に生まれ落ちる。そして、母親の血から出来た母乳を飲み育つ。  親孝行も出来ないうちに死んでしまうとは、と言うと悲しさと切なさとを引っくるめて、親不孝と言って鬼が五逆罪を執行する。  そして死んでも尚、子供の為に石積みをして幸せを願う母。母親には勝てない。そんな悲しみを乗り越えた母にこそ幸せになってもらいたい。
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