八章

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「先生?」  今日の白椿の質問コーナーはまだ続いた。熱心なのは良いことだが、深く考え過ぎるのが白椿の悪い所だ。 「以前の水で洗い流した本性の話しをしても良いですか?」 「いいよ、何か気になる?」 「あの本性は相談者に紛れてここへ侵入してきましたよね? それは結界のせいで入ることが出来なかったから岩塚様に便乗したことであって、もし単独で入ることが出来たとしたらどんな状況なのでしょうか?」  あの時の本性は頭が良かったのか俺が甘かったのかは分からないが、呆気なく侵入されてしまったことについでは対策不足だと反省せざるを得ない。そして短時間ではあったが俺の所見では、何人もの霊能者を食らっていることは理解できた。  でもアイツはまだ完全に消滅していない。まだどこかで息を潜めている。絶対に来る、また白椿と大和を狙って来ると確信している。 「この結界がいつまてもつかは分からない。多分結界を破って侵入してくるだろうね。若しくはまた同じ様な手で入ってくるか否か。  色々準備はしているが、もしかしたら来ないかも知れないし、明日来るかも知れないし。こんな事に巻き込んでしまって申し訳ないと思っている。  不安がらせることを言ってごめんね。でも大丈夫だよ、俺が守ってあげるから。命に替えてでも守るから」 「命に替えてでもなんて言わないで下さい。まだ半人前ですけど、自分の事は自分で何とかします。だからそんな事言わないで下さい」  白椿は俯いたままか細い声で言った。  しばらくの沈黙のあと、俺はある物の存在をを思いだした。  私用の鞄から例のリメイクリングを取り出して白椿に渡した。 「今日仕上がって取りに行ったんだ。お祖母さんの指輪。思いのほか綺麗に仕上がってビックリしたよ」  ダイヤも土台もピカピカになっていて、おまけにリングボックスと鑑定書まで付けてくれた。白椿は目を潤ませながらそのリングを眺める。 「ほら、着けてみなよ」  そう言っても動かなかった白椿からリングを取ると、指にはめてあげた。 「ピッタリだね、良かった。白椿を守ってくれますようにっておまじないもしておいたよ」  背の低いティファニーが可愛かった。それを身に着けている白椿も初々しくて可愛かった。  これから何が起こるか分からない。もしかしたら命をも脅かされる事が起こるかも知れない。そう思うと気持が先走りして居ても経ってもいられなくなる。そして早く迎撃態勢を整えなければと焦りばかりが募る。
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