八章

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 自分の記憶が繫がった今、怒りの塊となった俺は歯止めがきかなくなっていた。 「お前は絶対に許さない!」  怒りにまかせて呪文が効かないうちに波動を打とうとした。するとその構えとは別方向からヘドロの手が伸びてきた。煮えたぎったヘドロが俺の脇を突こうと迫ってくる。  一瞬、目の前を横切った光から鈍い音がした。  ドスッ 「あっ、お前は」  あの時見た化け猫が更に大きく成長して、ヘドロの攻撃を食らっていた。そしてなぜか俺の身代わりになってくれていた。 「なんで? どうしてだよ」  化け猫はヘドロの腕を脇腹から食らって心臓を握られている。苦しかろうに、か細い唸り声をあげる。  俺の心臓を掴んだと勘違いしたヘドロは、そのまま化け猫の魂を吸収する。 「化け猫、お前! 何でここに来たんだ!」 「カノジョタスケテクレテアリガトウ」  化け猫の目は虚ろで立っているのがやっとだった。彼女の代わりに礼を言いにきたのか、己が抱えた憎しみは解消できたのか。  この先、自分の魂がどうなるかも分からないのに身を挺して守ってくれたこと、感謝する。そしてその魂は必ず成仏させてやるからな。化け猫は力無くその場に倒れた。  そして異変が起こる。霊能者ではない魂を吸収したヘドロは見る見るうちに弱りだし、化け猫の心臓を掴んだ手が石化した。  キィィィ  ヘドロは目眩がするほど高い音を出すと、体の突沸が弱まりだした。霊能者だと思って勢いよく吸収したため何の警戒もなかったのだろう。そして劇的に弱った。  どうやらこのヘドロ、動きは素早いが頭の回転はそうでもないらしい。  だいぶコイツの正体が分かってきた。が、決定打が無い。無闇に魂抹消をしてしまうとヘドロが取り込んだ全ての魂までもが消えてしまう。さぁどうする俺。 「先生! 私達の結界が」  よく見ると体力の低下と共に俺達の結界が薄れてきた。集中出来ない、意識が散漫する。そこへ二発目のヘドロの腕が向かってきた。 「負けてたまるか!」  波動を出したが弱過ぎた。ヘドロの腕は波動を突き破り俺目がけて飛んでくる。俺は白椿を守ろうと大の字になって盾になる。  グシャッ  嫌な音と共に血しぶきが舞い散り、俺の頭から降り注ぐ。俺はヘドロにやられた、そう思った。
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