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病室で帆乃香の手を握り目が覚めるのを待っていた。幸いにも命に別状はなく意識も戻っている。ただ、かなり体力を消耗していたため、しばらくの療養が必要だとのことだ。
帆乃香のご両親にかなり怒られてしまった。大切な娘を傷つけて! と。そして平謝りするしかない俺。
お師匠様が振りかけてくれた金粉が良かったのか、傷跡は残ってしまうが体の傷の方は回復が早い。医師も驚くほどの回復力だと褒めてくれた。
あれから帆乃香の事が心配でならない。申し訳ない気持ちが先立っているのだろうか、眠っている顔を見るたびに謝ってばかりいる俺。
早く元気になってくれ。そう願い手を握る。
どれくらい経ったかな。病床に横たわる人の太ももに頭を乗せて眠りこけていた。
「先生?」
声を掛けられて慌てて起きた。
「あっ、起きた?」
「起きたのは先生の方ですよ?」
そう言って二人でクスクス笑う。
「気分はどう?」
「お蔭様で、だいぶ良くなりました。先生のお師匠様は神ですね」
「あの方は、本当の神だよ」
俺はベッドを少し立てると、冷蔵庫から冷えた水のペットボトルを取り出し渡した。
「ありがとうございます」
そして椅子に座って話を始める。
「白椿を守れなくてごめん。ご両親にも怒られちゃったよ、本当にごめん」
「いいんです。命があるだけで、それだけでいいんです。白椿は死んでしまいましたけど、こうやって先生が側にいてくれるだけで私は幸せです」
「そっか」
「あの、聞きたいことが沢山あるんですけどいいですか?」
久しぶりの質問タイムだ。
「解放された魂達は成仏出来たのでしょうか?」
「多分ね。食われたのはみんな霊能者だったから、天国へいけたと思うよ。最後の二つを除いてはね」
「化け猫ちゃんと真次さんはなぜあの場に?」
「化け猫はあの低い結界を飛び越えてきたんだね。そして化け猫に真次さんが集ってきたんだよ。二人とも前々から近くにいることは感じていた。あの結界があったから入ってこれなかったみたいだね」
「そうだったんですね。化け猫ちゃん、大きく育っていましたね」
「そうね。人間の欲を食べて大きくなっちゃったんだよ。変な言い方だけど日高の現在は知らない、化け猫が離れたくらいだから気が済むようにしたんじゃないか?
春江さんの娘さんが元気になったからみんな幸せになれたって事なんじゃないかな、と俺は思うよ」
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