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私は柚希。
数年前、私が大学生だった頃の話をしますね。
友人に教えてもらうまで気にしたことが無かったのですが、私は道ですれ違った人の、(一緒にいた友人すら気づかなかった)香水の匂いにも気づくような匂いにとても敏感です。
私自身を含め仲の良いA子・B美の三人でいつものように昼食をとっていた時、微かでしたが友人の一人、A子から今までと違う柔軟剤でもない匂いがしました。
A子とは同じ大学だったのですが、それから数日間、A子は学校に来ませんでした。
心配してA子の携帯に連絡してみると、
「ごめんね。最近、調子が良くなくて……」
との事でした。
いつも元気だったA子は家にこもるようになりました。
私は風邪でも引いてるのかなと思っていたので驚きました。
それから数日……
A子とシェアルームをしていたA子のお姉さんから
「A子が倒れて救急車で○○病院に緊急搬送された」
と連絡がありました。
急いでその病院へ行きましたが面会許可が下りていませんでした。
ようやく面会許可が下りた日、私と同じくA子を心配していたB美と一緒にお見舞いに行きました。
A子のいる病室の扉を開けた瞬間、とても強い『匂い』がしました。
それは"汚"の匂いではなく、また"薬"の匂いとも言えないものでした。
まるで、飴や琥珀糖のような砂糖菓子を煮詰めて腐らせたような甘ったるい匂い…その中にやつれた様子のA子が顔だけをこちらに向けてベットに横たわっていました。
帰り道、私はB美にあの甘ったるい匂いのことを聞こうかと思いましたが、怖くて聞けませんでした。
ふと、思い出したのです。
私が小学生の時、祖母が病院で入院していた時のことを…
母と祖母のお見舞いへ行くとA子と同じ、甘ったるい匂いがしました。
加齢臭にしては突然発した事や、使っている薬品とも違っていてとても不思議に思ったこと。あの匂いは今でも覚えています。
そして、もう一つ…
私の通っていた小学校はとても古く、至る所に隙間が空いていて、裏の山から迷い込んだ小動物が死骸となって発見されることが多々ありました。
姿が見えなくても、匂いで分かる。気が遠くなりそうな程甘ったるい、嫌な匂い…
そう、あの匂いは……
『死臭』だったのです。
その後、あの『匂い』を嗅ぐのが怖くてなかなかA子の所へ顔を出せずにいましたが、流石にずっと会わないのはA子に申し訳なく意を決して会いに行くことにしました。
病室の扉を開けると、そこには血色のいい以前と変わらない元気な姿を取り戻したA子がいました。
何より、恐れていたあの匂いがなくなっていたのです。
もう、A子からあの嫌ない匂いはしなくなっていました。
その後、A子は闘病を続け無事退院。
それ以来、彼女からあの匂いはしなくなりました。
だけど、またあの匂いを嗅いだら……
もし、その人が病気だったら……
そう考えてしまうと、なんだか怖くて、他人の体臭が分かるほど近くに寄れなくなってしまいました。
また、服を脱ぐ時の自分の体臭にも敏感になってしまいました。
もう、あの匂いを嗅ぐことは、どうか、どうか、今後一生、ありませんように………
あ……………………
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