番外編 1

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 軽くパニックになりながらも案内された洗面所で顔を洗い、促されるまま居間に入った。  西村さんの横に、南がちょこんと座っている。 「えっ? 南?」 「千春? 千春も、ここに泊まったの?」 「う……。起きたらなぜかここだった」 「ああ。酔ってて結局家が分からなかったとかで、林がここに連れてきたそうだ」  ……あ! じゃあ、あのふわふわとした抱っこされてる感覚は、夢じゃなかったんだ。って、感心してる場合じゃなかった。 「ご迷惑かけて、すみませんでした!」  今は更生してるとはいえ、元はヤクザ屋さんだ。礼儀を欠いたら、きっと怖いめにあうに違いない。私は姿勢を正して、頭を下げた。 「連れて来たのは林だ。それに部屋は余っているから、気にすることはない」 「そうだよ~。だけど千春の飲み過ぎなのは、気になった。二日酔い、大丈夫?」 「まあ……なんとか」  南は、元ヤクザ屋さんの家だというのに、まるで自宅にいるかのようにリラックスしている。くつろぎ過ぎだ。  きっと、来なれてるんだろうな。恋人だもんね……。 「失礼しやす」  小柄な男が、お膳を三つ持って入ってきた。  二つのお膳には、ご飯に味噌汁、卵焼きにひじきの煮物が添えられている。そしてもう一つのお膳には、小さな土鍋と茶わんがのっていた。 「こちらのお方は二日酔いだと聞いたので、雑炊にしやした」 「あっ、ありがとうございます」  びっくりした。気遣ってもらっちゃった。 「すまんな、達也。林はどうした?」 「いつもの日課が終わったようなので、これから飯にしてもらうところです」 「じゃあ、林の分もここに運んでくれ」 「分かりやした」  えっ? 林さんって、私を運んでくれた人がここに来るの? どんな人なんだろう。 「千春、昨夜林さんに送ってもらったんだよね。覚えてる?」 「ううん。ちっとも」 「そっかー。じゃあ、きっと驚くよ」 「えっ?」  驚く?
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