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がらりと襖が開いて、さっきの男の人がお膳を持って入ってきた。その後ろから、百九十センチはあろうかという大男がのっそりと顔を見せる。
でかっ! なにこの人、まるで外国のプロバスケットボール選手くらいの、身長があるんじゃないの?
おまけに林さんというその人は、体がでかいだけでなく全体的に異様な迫力があった。浅黒い顔に太くつり上がった眉、鼻が高く彫も深いが凄みがある。
こんな人に、昨日私お姫様抱っこされたってわけ?
想像しただけで、冷や汗ダラダラだ。
チラリと南の様子を横目で見てみるけれど、なにも動じる様子はなくのんびりとくつろいだままだ。
こいつ、すごいぞ。
「みんな、出たか?」
「はい。徹の奴が、夜更かしをして眠たそうだったのでカツを入れておきました」
「徹か……。ホント、あいつなー」
こわもて同士が日常会話を続けながら箸を進める中、南は単純に朝食を堪能しているように見える。こっちは、緊張半端ないっていうのに。
「ところで南、今日これからどうするの?」
「私? えっとね……」
南はチラリと横にいる西村さんに目をやった。
「西村さんも休みだから、今日は出かけようって話しになってるの。ね?」
「ん? ああ。そうだ、林。悪いが、その子送っていってな」
えっ?
「ええっ? ついでじゃない。送ってこーよ、西村さん」
「ああ?」
心底嫌そうな声だ。
この男、南以外に優しくする気はないってわけね。
「分かりました。送っていきますから、安心して出かけてください」
ええっ? ええええええー!
焦る私の様子を見て、南は申し訳なさそうな顔をした。
「……ごめんね千春。西村さん、せっかちで」
「ああ……うん」
そうか。二日酔いが酷くて、まだ半分も食べれてないからな。雑炊自体は美味しいんだけどね。
「行くぞ、南」
「あっ、はい。――じゃあ千春、また会社でね」
「うん、バイバイ」
南が出ていった後、私は必死でなんとか完食した。だけどすぐに動く気にはなれない。
……うん。こんなんじゃ、車になんて乗れっこないね。
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