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「あの……お代わりしますか?」
遠慮がちに襖が開いて、先程の背の低い筋肉質の男の人が私に尋ねた。
「あっ、いいえ。ごちそうさまでした。とっても美味しかったです。二日酔いでなかったら、お代わりしたかったです」
「そうっすか! そう言っていただけると、励みになるっす」
男はうれしそうに破顔して、「ゆっくりしていってください」と言い残し、食卓に残っている茶碗を片付けて出ていった。
なんというか……。
みんな見た目はなんとなく怖そうだけど、人のいい人たちばかりみたいだ。
「どうしますか?」
「えっ? うわっ、びっくりした!」
突然頭上から声が降ってきて驚いた。大男の林さんが、襖の隙間から顔を出している。南たちを見送って、戻ってきたようだ。
「……驚かせてしまって、すみません。送っていこうかと思うのですが、車は大丈夫そうですか?」
「ああ~、ちょっときつそうです」
私の返事を聞いて、林さんが考える素振りをみせた。
この人も……身体つきも大きくて顔も怖そうなのに、私のこと気遣ってくれてる。人を顔で判断しちゃ、ダメなんだな。
「じゃあ、気分転換にこの辺散歩しましょうか」
「えっ?」
林さんはそれ以上なにも言わずに、じっと私を見ている。私の答えが出るのを待っているようだ。
散歩ってさあ、この大きな人と二人でってことだよね。ちょっとなあ。……でも、この家でこの大男と二人きりでいるよりは、ずっといいかな。
「行ってみます」
……あっ、変な言い方。
林さんは気にする様子もなくくすりと笑った後、「じゃあ行きましょう」と、私を促した。
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