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外はいい天気で、散歩日和だ。風も気持ちよく、ところどころに植えられている草花が、陽に照らされてキラキラと輝いている。
しかし……こうやって歩いているのを見ると、ホントでかいなこの男。正確には何センチなんだろう。
なんてそんなことを考えながら歩く私達のかなり前方から、四~五歳くらいの男の子がこちらに向かって歩いてくることに気が付いた。
どうやら男の子もこちらに気が付いたようだ。立ち止まって、私たちをじっと見ている。
あ、まずい。これ、怖いおじさんを見て泣きだすパターンじゃないの?
「おじちゃーん」
えっ?
てっきり泣いて逃げだすかと思ったら、林さんに向かってぶんぶんと手を振りながら、こちらに向かって走ってくる。しかも満面の笑みで。
そし林さんの近くまで来た男の子は、抱っこをせがむようにその場でぴょんぴょんと跳び跳ねた。
「肩車するか?」
「うん!」
男の子のうれしそうな返事に、林さんは両手でその子を軽々と持ち上げて、自分の肩に乗っけた。
「おじちゃん、サイコー! いっつも、パパより高い」
「ハハハ。最高かー」
「うん!」
なんだ、この光景。怪物に懐く幼児。いやいや、幼児に懐く怪物か?
異様な光景を呆然と見つめる私の耳に、バタバタとこちらに走り寄る足音が聞こえてきた。もしかしたら、この男の子の母親?
危ない人と我が子が遊んでいると焦って、走ってきたんだろうか?
気持ちは分かるけど……と、ドキドキしながら見ていたら、その女性は林さんに近付き「いつも、すみません」と言った。
そして二言三言会話を交わした後、女性はぽかんとしている私のところへとやってきた。
「あの……もしかして、林さんのお知り合いですか?」
「あ……はい」
知り合いというほどのものではないけど……。
「そうですか」
女性はホッとしたような顔になり、にっこりと笑った。
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