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「林さんたち、凄いですよね」
「えっ?」
「ああ……あなたは、この辺の人じゃないから分からないかな」
「と、言いますと?」
「林さんの過去、知ってますよね?」
「はい、知ってます」
「西村さんの家の近所に住む人はさすがにいなかったんですけど、でも同じ町内に住む人はいるでしょう?」
「そうですね……」
「西村組があった頃はそれこそ鼻つまみ者で、町内会での付き合いとかそういうものは一切なかったしみんな彼らを避けてたんですけど、組を解散してからはみんなまるで人が変わったようになって……。掃除にも積極的に参加してくれるようになりましたし、台風のときとか大雪でみんなが困っているときは、率先して手伝ってくれるようになったんです」
「そう……なんですか」
「ええ。でもそれでもやっぱり最初は、あんな怖い人たち信用しちゃならんって、みんな警戒してたんですけどね」
「特に林さんなんて、大きいし顔も怖いですもんね」
「そうそう、そうなの!」
言っちゃあなんだけどといった共通認識に、思わず二人のテンションが上がる。
「でも一番優しいのよねえ」
林さんに肩車されてはしゃぐ男の子に、女性は目を細めた。
「ママー!」
肩車から降りた男の子が、こちらに向かって全力疾走してくる。
「楽しかった?」
「うん、お空がとっても高く見えたよ」
「そう? よかったわね。――いつも、ありがとうございます」
「いや……俺も、楽しんでますから」
「ひろ君、おじちゃんにお礼言って」
「うん! おじちゃん、肩車ありがとう!」
「どういたしまして」
「じゃあ、そろそろお家に帰ろうか。おばあちゃんが待ってる」
「うん」
「それじゃあ、お先に失礼します」
「またね、おじちゃん」
「おう、またな」
満面の笑みで手を振り続ける男の子に、林さんも手を振り返していた。
本当だったんだな、南が言ってたこと。
一生懸命本気で、更生に頑張ってたって。
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