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関わりたくないと思っていたのに 1
休日のこの日、私は頭を悩ませていた。食料を買いに行かなきゃならないからだ。
この近所で一番品揃えがあり、しかも近いのは例のあのさくらスーパーだ。でもあそこに行くと会いたくないあの人たちに会ってしまいそうで、小一時間は悩んでいる。
うぅ~、……もうっ!
悩み過ぎて禿げてしまいそうだ。
私はバッと勢いよく立ち上がり手早く支度を済ませ、髪をポニーテールにまとめて財布とエコバッグとカギを持って、玄関を出た。
要は、サッと行ってサッと帰ってくればいいのよ。買いたい物はちゃんとメモしたし、滞在時間が短ければ出会う確率も低くなるはずだもの。
鼻息荒くスーパーの近くまで早足で歩き、それからこっそりと建物の陰に隠れて辺りをうかがった。
……どうやら西村も、その仲間らしき人たちもいないようだ。
タタタと小走りでスーパーに入り、ホッと息を吐く。
とりあえずスーパーの中なら安心よね。手早く買い物を済ませて、さっさとアパートに帰ろう。
カートに籠を乗せて、メモを見ながら歩く。お目当ての食材を手に取り吟味して、籠に放り込んでいく。
あっ、ブロッコリーだ。リストには入れてなかったけど、新鮮で美味しそうだしこれも買っていこうかな。
山と積まれているその中から、一つを手に取ろうとしたそのとき、見覚えのある人の姿が視界の端に入った。
ええっ?
ギョッとしてすぐさま棚の陰に隠れた。
今の、あの西村って人だったよね。籠を手に歩いているから買い物に来ているのかもしれないけど……。
でも、あの人が買い物? どう考えても、ヤクザのボスが買い物だなんておかしくない?
違和感ありありの光景に、何かあるのかもしれないとこっそりと隠れ、とにかく早く買い物を済まそうとブロッコリーを籠に入れ横を向くと、今度は別の所を私を拉致した男が歩いているのを見つけてしまった。
なにこれ、本当にどういうこと? なんでここにあの二人がいるの?
「…………」
もういい。どんなに考えても答えが出るわけじゃないもの。とにかくさっさと買い物をすませて、お家に帰ろう。
もう食材の吟味なんか考えてる暇なんてない。私は必要な物だけさっさと籠に入れ、支払いを済ませてスーパーの外に出た。
はあーっ。
一気に肩の力が抜けた。なんなのあの人たち。
まあいいや、今はスーパーの中だ。このまま急いで帰れば、あの人たちに会わないですむものね。
そう思いながらも、どうしてもスーパーの入口が気になって、振り返りつつ歩いていたら誰かにどしんとぶつかった。
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