4話 君と夜を明かしたい

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それが最近は、直接本人に話しかけに行くようになった。行ける雰囲気になったんだから、まぁそりゃそうなるわな。 「七海くんも安堂さんと一緒でずっとガード硬かったのに、最近どうしたんだろうねぇ?」 「でも彼女出来たって感じではないし〜」 「会社が居心地良くなって気が緩み始めたとか?なにその可愛い生き物」 「何にしても最近の七海くん、キラキラ度が増してて推せる……」 「写真集作って毎日見たい」 もうありますが。 クソ、絶対言えねぇし言いたくねぇ〜。 部下の評価が上がって嬉しいはずなのに、何で手放しに喜べないんだ俺。 あれか?部下を成長させたのは俺なのに、俺の方の評価が上がらないことにモヤモヤしているのか? 俺はそんなに小さい男だったのか? 「はぁ……」 カッコわりぃ。 こんなとこ七海には絶対見せられん。 給湯室は話が盛り上がりすぎてしばらく空きそうになかったので、俺は待つのをやめて下の階にある自販機へ向かった。  自販機の前で缶コーヒーを飲んでいると、スマホに通知が入った。ポケットから出して画面を確認する。 『安堂さん今日明日予定あります?』 七海からだった。今日明日とは珍しい誘い方だな。 …………いや、なに不埒な想像してんだ。 まさか夜通しで女性慣れのリハビリをしようってことはないはず。 そんなんされたら死ぬぞ、俺の理性が。 『明日土曜だし特に出勤予定もないから暇』 暇ってほど暇じゃなかったが、今全ての予定を消したので暇になった。 さて、何を言ってくれるかな? 『それなら もしよければなんですけど 今日から朝までカラオケ行きませんか?』 徹夜カラオケかー、そうだよなーそういうオチだよなー。 というか七海、カラオケ好きなんだな。全然イメージ無かったから、今まで遊びに行く選択肢に上げてなかった。 『カラオケ好きじゃなければ普通に飲みに行くとかでもいいです』 『いや俺もカラオケ好き。じゃあ仕事終わり次第集合で』 『ありがとうございます 楽しみです』 楽しみ、という言葉でさっきまでモヤモヤしていた心が一気に軽くなる。  早く仕事を終わらせたくなって、残り半分あった缶コーヒーを一気に飲み干してゴミ箱に捨てた。 企画文書作成時間の最速を今日更新してやる。 「ーーご確認します。2名様フリータイムでお間違いないですね。それではこちらがマイクとお部屋になります。ごゆっくりどうぞー」 「安堂さん本当に今日大丈夫だったんですか。無理してないです?」 「いや全然?」 明日やるつもりだった仕事は全部片付けた。何も問題はない。日を跨いで時間を拘束することに引け目を感じているんだろう、道中でも七海は念入りに確認を取ってきた。 本当、いい部下だよ。 俺は適当に酒を持ってきたが、七海はソフドリを入れてきていた。どうやら歌う時は飲まない派らしい。 「そういえば安堂さんが撮ってくれた写真、評判いいですよ」 曲を選んでいる俺の横に座った七海が、スマホの画面を見せてきた。 それは、先週リハビリした時俺が撮った写真だった。 本当に効率厨というか、七海はどうせリハビリで女装するなら定期更新用の写真を撮ってくれと俺にカメラを渡してきた。綺麗な人の一番綺麗なところを探すのはいけないことをしているようで、レンズ越しでもかなり精神力が必要だった。 七海が帰った後、まさか自分で撮った写真で抜……まぁ、伸びたのなら良しとしよう。 「それはなによりだな。最近お前の自撮りばっかだったから、反応良かったのかもな」 「何で自撮りばっかって知ってるんですか」 …………。 何も言うことはないので目を逸らした。 「すぐ人のアカウント漁る……」 七海がジト目で俺を睨んできた。そういう顔しても整ってるから恐ろしい。 「さて、歌うか〜」 「話逸らしましたね」 七海とはもう気心が知れているので、大衆受けを狙ったものではなく好きな曲を歌った。 あー久々にアニソン歌うと、喉開いて気持ちいい。
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