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僕はエルのことを親友だと思っているし、きっと向こうも同じであるはずだ。
成人は二十歳――僕達は互いにまだ十一歳。九年過ぎても、今の大人達のように染まらず仲良しでいよう。僕とエルは、幼い頃からそう誓い合った仲なのだった。
「あ」
勢いよく噴水広場まで駆けて行ったところで、僕とエルは見慣れた金髪に遭遇した。僕達より一つ年下の少年、ローマンである。
「あ、エルにクレフ、おはよう……」
「おはよう、ローマン。その……」
彼も、木の葉集めに駆り出されたのだろう。木の葉が降り積もったら、その次の日はみんなが仕事と学校を休んで木の葉集めを手伝うのがこの村の規則である。ただ。
「顔色悪いぞ。大丈夫かよ」
僕は心配してローマンに声をかける。明らかに、彼はふらついていた。しかもよく見ると、昨日と同じ服を着てはいないだろうか。
「だ、大丈夫」
ローマンは無理やり笑って見せた。
「木の葉集めくらい、できるよ。ちょっとお腹空いてるだけだもん」
「……無理するなよ、あんまり」
「うん、気にかけてくれるだけで嬉しいよ。ありがとね」
彼の家は、村の外からやってきたよそ者。そのせいで、村の大人達から冷たくされており、地位も最下位に格付けされていることを知っている。この様子だと、朝から何もご飯を食べていないのではないか。あるいは、本当に少ししか食べられていないか、だ。
――こいつがこんなに困ってるのに、なんで大人は誰も助けてやらねえんだ。
もし自分が独立していたら、貧しい彼と家族を朝食に招待して振舞ってやれたのに。僕は自分の無力さが辛く、同時に助けない大人達があまりにも腹立たしかった。
せめて、木の葉を売って彼等が少しでも楽になれればいいのだけれど、と思う。
ローマンの家が毎年、木の葉を貰ってすぐ売ってしまうことを僕達はよく知っていたのだった。
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