ひとひらの不幸

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 ***  あれから、一年。僕とエルは、十二歳になっていた。  今年もまた黄金の葉が降り積もる季節となった。僕はエルと一緒に木の葉を袋に入れて集めながら、あの日のことを思い出す。  一年間、ずっと考えていたのだ。どうしてあのような悲劇が起きてしまったのか、と。 「……僕、未だに納得してないんだよ」  ぽつり、と僕はエルに対して漏らした。 「確かに、ローマンの家に木の葉が一枚多かったのは事実みたいだ。でも、ローマンの家にあった木の葉が、盗まれたものだなんて証拠はなかったろ。だって、木の葉にそれぞれの家の名前が書いてあるわけでもないし、番号がついてるわけでもないんだぜ」 「……そうだね」 「ひょっとしたら、誰かがローマンにあげたものだったのかもしれない。あるいは、全部売ったつもりが数え間違えて売り忘れがあっただけかもしれない。その二つなら罪になんかならなかったはずだ。なのに何で、他の家が持っている木の葉の枚数を数え直すとか、そういうことを何も確認しないでさ。何で無実だって訴えてるローマンの家族を、絶対に犯人だって決めつけた?」  それに、と僕は続ける。 「大体、エルの家の倉庫をさ。鍵も壊さずに開けることができるような犯人だぞ?なんで一枚しか盗まなかったんだよ。どうせバレるんだから、もっと大量に盗んでいって、さっさと村の外で売りさばいちまえばよかったじゃねえか。村の中でいつまでも隠しておくってのもナンセンスだ。やっぱりあの事件、なんかおかしいんじゃないのか」  考えれば考えるほど、疑問が募る。  しかもよりによって、疑惑をかけられたのがこの村で最も地位が低い家――つまり、村長に疎まれていた一家であるのは何故だ。  まるで誰かが、そうなるように仕組んだかのようではないか。 「この金色の木の葉は、神様の授け物だって言うけど、本当にそうなのか?」  僕は金色の葉を一枚手に取り、思わずぼやく。 「これを盗んだり奪ったら、殺人と同じく極刑でもいいなんて。そんなの、何で誰もおかしいと思わないんだ」 「……うん。そうだね」  果たしてそんな僕の言葉に、エルは何を思ったのだろう。木の葉を袋に詰めながら、彼は泣きそうな声で告げたのだ。 「本当に……本当にそう、だよね」
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