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***
その一週間後。
またしても、騒ぎは起きていた。広場に引き出されているのは、とある幼い姉妹とその両親。またしても、村長の家の倉庫から木の葉が盗まれ、この家の住人がそれを持っていたというのだ。
「どいつもこいつも、村長の私を馬鹿にしているのか!」
村長は激怒して、家族を庇う姉妹のお父さんを鞭で打ち据える。
「去年の有様を見て、何故また同じ犯行に及ぼうとした!祈り刑では足らんか、ええ!?」
「お許しください、村長、村長!私達は盗んでなどいないのです、もしそうなら何故自ら木の葉が増えていたことを報告しに行くでしょうか!」
「ええい黙れ黙れ黙れ!」
その姉妹の一家も、ローマンの一家ほどでないけれどボロボロの服を着ている。彼等もけして、この村で地位が高いと言えない人間だった。というか、元は中堅どころだったのが村長の不興を買い、村の隅に追いやられた一家であると言えばいいか。
この村では、村長に逆らえば生きていけない。
例え村長が自己都合で、彼等の畑の土地を安く買い上げようというとしていたとしても。――彼等はそれに逆らってしまったのである。
――やっぱり何かおかしい……!
己の立場はわかっている。それでも、このままではまた彼等四人もローマンたちと同じく殺されてしまう。僕が意見を言おうと一歩前に進み出た、その時だった。
「死刑になるべきは、その家族ではないです」
「!」
いつも大人しい彼等しからぬ、はっきりとした声。
村長のすぐ後ろに佇んでいた、エルだった。
「村の皆さん、聴いてください。……おかしいと思いませんでしたか。何で、去年も今年も、僕等の家の倉庫の鍵が壊されるのではなく……開いていたのか。まるで鍵が持っている人間が開けて中のものを取りだしたように」
「え、エル?何を……」
「変だと、思いませんでしたか。何で、倉庫の中から葉っぱが一枚だけ盗まれていたのか。そんな風に綺麗に鍵を開けるだけのことができるなら、もっとたくさん盗めたはずなのに」
彼はまっすぐに見つめた――自らの父親を。
「おかしい、ですよね。……なんで父さんは、最初から犯人を決めつけてるんですか。他の家族や村を調べもしないで。……まるで、犯人が誰なのかはじめから決めていたみたいに。しかもそれがよりによって、父さんに一番嫌われている一家ばかりだなんて」
全員の視線が、村長に集中する。青ざめる者もいた。それから、不自然なほど露骨に顔を逸らす者も。
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