自室の少女

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自室の少女

灯りの点いていない部屋。 二段ベッドと呼べない程低い白枠のベッドの上に彼女は座っている。 見慣れた机に置かれた教科書類、そして大量のティッシュのゴミ。 泣き腫らした虚な目には何も映らない……と。 そうなってしまえばよかったのだ。 そうすれば相談所という名の「大人の問題」にすることが可能だった。 しかし、彼女は許せなかった。 昔に書き溜めた怨念がこもったメモの袋を開け、一枚一枚読む。 涙を流し、鼻をかみつつ、闘士の炎を燃やした。 『悪いのは私だけじゃない』 隣の部屋から私の悪口で盛り上がる声が聞こえる。 周りはクスクスと笑い、かわいそうだよー、と言う。 可哀想?そんな同情したふりは要らない。 どうせ同情なんて一瞬たりともしていないんだろう。 そう思って涙にまみれたティッシュのゴミを机に投げる。 『使っていない机』 彼はこの机をそう呼んだ。 何故そんなことを言われなければならないのか。 彼女には解らない。 『いつもこの机を使っていた私に何故こっちで勉強するのかと聞いてきたのはお前じゃないか』 そんなことを考えていた。 破られた紙に書かれたメモの続きを読む。 『そんなに嫌いならいっそ殺してくれればいいのに』 何度も思った。 自分を殺せば、彼は逮捕。 死んでしまえば自分の意識も無くなっているのだから、 後のことは考える必要もない。 自分の母親だって食費が浮いて助かるだろう。 「…ハハハ……」 乾いた笑いが口からこぼれ落ちた。 『なんだ。折角将来とか考え始めていたのに…興醒めだなぁ。』 そう思った所で体が無性に火照ってきた。 先程かけられたお湯のせいだろうか。寒気もする。 コップから飛んできたお湯は頭から上半身に至るまでの全てを濡らした。 服は乾いたが、色濃くなった心は乾かない。 電気のついていない部屋のようにグレーに染まり、どこか遠くへ行こうかと考えを彷徨わせる。 『さて。どこへ行こうか。あぁ、横浜なんて良いじゃないか。東京でもいいな。遠く、遠く離れた場所へ行きたい。』 彼は多分私が居なくなっても探さない。 『居なくなっても良いのなら、そもそも産まないで欲しかった。』 そんなことを思いながらベットに寝転んだ。
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