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ミミーと恐竜の大冒険
ある国のある町に歌のうまいミミーという女の子が住んでいました。
ミミーは町の人々からもよく好かれていて、町の外れの小さな赤煉瓦の家でおばあさんと二人で毎日歌を口ずさみながら暮らしていました。
でもある日、二人暮らしのおばあさんが病気で倒れてしまいました。しかも、ただの風邪ではありません。この病気は世界各地にある宝石、ブルークリスタルを集めて神秘の薬を作らなければ治らないというのです。
ミミーは思わず叫びました。
「なんですって!?」
しかも、驚くことにそのブルークリスタルは世界中にあるようなのです。ミミーは急いで旅の準備をすることにしました。おばあさんの様子を時々見に行って欲しい、と仲良しの花屋のお兄さんに頼み、大きなリュックに大切な物を詰め込んで、一刻も早くブルークリスタルを集めなければと、急いで家を飛び出しました。
しかし、それをどこからかじっと見つめる一つの影があったのです……。
ーーーーーーー
一時間ほど歩いた所で、ミミーは茫然と立ち尽くしました。目の前には大きな谷。一つあるとすれば、小石を投げただけで崩れそうな橋だけです。朝ごはんは多めに食べてきたつもりですが、少しお腹も空いてきました。いつもは感じない孤独感に涙を拭います。
「っ……!こんなんじゃダメだわ!」
ミミーはキッと顔を上げました。今帰ってしまっては様子を見に行って欲しいと頼んだ花屋のお兄さんに笑われてしまいます。えいっと小石を橋に投げ、気合いを入れました。
コツン……コロコロ…………
小石は橋に当たり、転がると、谷へと真っ逆さまに落ちていきました。谷底に石が落ちた音は全く聞こえず、ミミーの背筋に冷や汗が流れ落ちます。
そこに場の空気に似合わないおかしな声が静けさを破りました。
「うわぁ〜!どいて〜!」
それを見たミミーの口から小さくあっ、という言葉が溢れ落ちました。そして飛んできたものをまじまじと凝視しました。なんとそれは、手のひらサイズの小さな恐竜だったのです。
「うへ〜見つかった!?」
恐竜は目を丸くし、さもイタズラが見つかった時の如く、バツが悪いとでもいったような顔をして、慌てています。喋れる恐竜にポカンとしていたリリィはハッとし、恐竜に話し掛けました。
「あなたは、誰なの?何故、ここにいるの?」
すると恐竜は気まずそうな顔をして、口をつぐむ。
「僕がここにいた理由は…君を見ていたからなんだ。」
そう、ミミーに告げるが早いか、恐竜は小さな手を使い一生懸命指笛を鳴らしました。
その瞬間、ミミーはこれ以上ないかと言うほどに口を大きく開きました。なんてったってそこには誰も見たことがないと思うような景色があったからです。
「凄い……。」
見渡す限りの竜、竜、竜。様々な大きさ、様々な色のものがざっと50匹以上ミミーの目の前に浮かんでいたのです。ミミーは手のひらサイズの恐竜に告げました。
「この竜達はなんなの?」
聞いたが早いか、小さな竜が間髪入れずに返答します。
「僕の友達や親、兄弟、姉妹達!大丈夫。みんな君の仲間さ。」
仲間…?
「さぁ!この赤い竜の背中に乗って!」
こんな会ったこともない竜について行って良いものか。そんな疑問は浮かんできますが、あの孤独感をあと何週間、いえ、何ヶ月、何年も味わうだなんてことは耐えられません。ミミーは赤い竜のゴツゴツとした背中を恐る恐る登っていきました。ちょうど窪んでいて乗りやすい場所に腰を下ろし、ぎゅっと背中の凹凸に掴まります。
「準備はいい?それじゃあ、出発!」
手のひらサイズの竜の掛け声につれて、竜たちは空高く舞い上がりました。ミミーはそっと下を盗み見ました。花屋のお兄さんがパンの入ったカゴを腕に下げてミミーの家に向かうのが見えて、少しだけ安堵の息を漏らします。しかし、高度は徐々に徐々にと高くなっていき、ミミーは怖くなってつぶりました。
「大丈夫かい?」
赤い竜にそっと話しかけられ、ミミーはびっくりして腰を抜かしそうになりました。
「おおっと、ごめんよ。」
竜が申し訳なさそうに言うのが少し面白くて、ミミーはフフフと吐息を漏らします。そこへ先程の小さな竜が切羽詰まったようにやってきました。
「まずいよ!人間達がやってくる!」
何だかミミーにはその言葉に聞き覚えがありました。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
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