不器用そうな手に萌えを感じる

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不器用そうな手に萌えを感じる

いつもはそんなに気にしなかったのに、私は自販機のボタンを押した彼の手を凝視した。 「えー…どれにしよう。金ないし水でもいいか…」 そう言いながら彼は鈍く光る100円玉を投入口に手早く押し込んだ。その入れ方に何か目を見張るものがあった訳ではない、が…。 『なんだか、不器用そうな手だなぁ…。』 申し訳ないが、これは全くもって悪口的な意味ではない。多分彼は折り紙とかも得意なんだろう、が、しかし。その不器用そうな手を見た時に何故か硬派な雰囲気を感じ取ってしまった私が居た。 ポムッ! 唐突にそんな音がして私の右上らへんからから黒髪の少女が生み出された。因みに説明しておくと、この子は私の想像上の女子ちゃんで、今回は黒髪長髪、顔がすぐ赤くなるのが可愛い清楚系女子…という設定だ。 『よっしゃ!頑張って清楚ちゃん!』 『解りました。頑張りますね!』 そう言って私は想像の世界に飛び込んだ。 〜☆〜 「凄くないですかっ!?今の問題正答率低かったのに当たりましたよ!」 そう言って黙々とクイズを出すテレビの画面から目線を逸らし、清楚ちゃんが自慢気なドヤ顔を彼の方に向ける。 「すごいねー(棒)」 いつもはこちらが教える立場なのに…と少しだけ悔しくなり、彼は意地の悪い言い方をしてしまった。 清楚ちゃんが頬を少し膨らますのが視界の端に映ったような気がして彼はそっとそちらの方を盗み見る。 「っ……。」 清楚ちゃんは……拗ねていた。 口を尖らせ、プイッと顔を背けたその姿に癒され、彼は微笑んだ。 「ふっ……ごめんって」 彼が、俯いた頭に手を置いて、ぎこちなくポンポンと優しく撫でる。 清楚ちゃんは予想外の展開と彼の意外にも大きく、がっしりとした手の平に慌てた。 「や、やめてくださいっ……」 彼女の顔が赤くなり、撫でる手を慌てて止めようと躍起になっている。 その時、 バチッーー 真っ赤な清楚ちゃんとさも楽しそうに意地悪く笑う彼との目が合った。 二人は何だか気まずくなって手を離し、反対方向を向く。 TVのクイズ番組がまた一つ正解を発表する音が二人の間に響いた。 〜☆〜 「おいっ、おい、聞いてんのか?」 ハッとして顔を上げる。 やべぇ、変にニヤついてたか…?心の中の清楚ちゃんに100点の札を上げつつ、彼にごめんごめんと軽く謝る。 「えっと、何の話だったっけ?」 「お前は水買わないの?って話。」 あー、私は要らないや。持ってるし。そう言ってバックから水筒を取り出し、しゃがんで自販機から水を取り出している最中の彼に答える。 何だか無性に触れたくなって目の前にあるふわふわとした頭に手の平を乗せた。彼がこちらに顔をあげる前にわしゃわしゃと乱暴に撫でる。 清楚ちゃんは何があろうとめちゃめちゃ可愛いですが、実はこちらも可愛いんですよ。 誰に向けたかも解らない声を心の中でそっと呟く。私は彼のボサついた頭をそっと直して手を離した。 自販機の排出される熱がくるぶしに当たって何だか暑かった。
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