推しのハートをゲットせよ

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推しのハートをゲットせよ

20:00になった。 わたしがスマホを手に取った瞬間、通知が来た。 ポップなBGMとともに、すーさんの枠が始まる。 わたしは一番乗り。 こんばんは♪ コメント欄に書きこみする前に、 あー、マナマナこんばんは いらっしゃい、ゆっくりしていってね!いつも一番乗りだね、いー子だ。今日もすーの枠で楽しんでってね! と、すーさんが話しかけてくれる。 とても嬉しい。 すーさんの声は、ロリポップみたいに甘い。 心がくすぐられて、キュンとする。 枠が始まって5分妄想しないうちに、15人もの人が枠に集う。 みんなわたしと同世代の女の子だ。 アイコンに本人かどうかわからない写真を載せてる子もいる。 大抵はアニメの絵師さんが描いたようなイラストのアイコンだけど、 わたしは絵師さんにアイコンを作ってもらうほどのお金がないので、フリー素材から見つけた萌え系の女の子のアイコンにしている。 ほんとのわたしは萌え系ではないけどね。 わたしは高身長女子だ。 170センチもある。 それが凄いコンプレックスで、 背の低い萌え系のアイドルみたいな女の子に憧れている。 ないものねだりなんだけどね。 お家もそんなに裕福ではないので、スマホ代はアルバイして払っている普通の女子高生だ。 学校では、高身長が目立って、嫌でも人目を引いてしまう。 自分では目立ちたくないんだけど、いつも悪目立ちして、派手な子たちに因縁をつけられる。 実はわたしのバイトは、モデルなのだ。 事務所に所属して、たまに 学園ドラマのエキストラなんかに出演している。 そのことはみんなに内緒にしてるんだけど、ある時、 ティーンのファッション誌のお仕事を引き受けたら、 自分の予想以上の反響が出てしまい、バイトしてることが学校にバレてしまった。 本当は学校ではバイト禁止なのだが、担任の先生はウチの経済事情を知っているので、わたしの写真が掲載された雑誌を見て、 「ほー、世の中には良く似た人がいるものだなぁ、田中に似てるけど、この子の方がお前より美人だなぁ」 とみんなの前ではぐらかしてくれたので、無罪放免になったのだ。 学校というところは、人間関係が非常に面倒くさいところで、わたしは本当はひとりで誰にも干渉されずに 過ごしていたいのだけど、 そうもいかなくて、 長い髪をおさげにして、前髪ぱっつんの冴えない女子高生に見えるように工夫して、 出来るだけ地味な隠キャな子と連むようにしている。
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