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「本日はお足元の悪い中お運びいただきまして──」
う~む、相変わらずの挨拶が繰り返されているの。そもそも、こんな立派な建物内にあるのだから、足元悪いもへったくれもないものを……外も昔と違って、雨に濡れた土が跳ねるような道ではないしの!
「皆様お待たせいたしました。これより、結婚式を執り行います。どうぞ皆さま、所定の席にお着きください」
む、ようやく始まるのか。我も自分の席へと参らねばな。
おお、さっきの二人組もおるな。あの席は……花嫁の友人か?
到着が早すぎたと言っておったが、結局どこで時間をつぶしておったのかの?
はてさて、今日夫婦になる二人は……ふふ、照れておるのか緊張しておるのか、初々しい二人であるな~。
見てるこっちがなにやらむずがゆくなりそうじゃ。
儀式の進め方はさほど変わりはせぬが、そこにいる人の身なりや雰囲気、纏う空気は時代と共に様変わりしていく。
洋装を着た者も本当に多くなっておるしな。
しかし、変わらぬのは皆、夫婦となる二人の幸せを願って集まっている。それは今も昔も変わらぬの。
……まあ、たまに怨念のこもった眼差しを向ける輩もおるがの。婚礼前にいったい何をしでかしたものやら。
とりあえず今日は負の念も感じぬし、和やかに進みそうじゃな!
お、次はいよいよ誓詞奏上、我に向けて夫婦になることを宣言する時だの。
二人仲良く、これからの人生を共に歩むことを誓う。神の前で宣誓するものだが……はてさて、この二人はどうなるのだろうかの。
人の世と同じく、人の心も移ろいやすく、今日この日の誓いも次第に忘れてしまうもの。
我はいつも、その命果てるまで共に生きて欲しいと切に願っているのだがな……
まあ、我の父母も、なかなかに壮絶な別れをしておったからの。人のことは言えんな。
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