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 私はというと。決して傷つくことはなかった。なぜなら、最初からカラッポだったから。他の者が同じ行為を繰り返せば、相手の傷を移し替えられてしまい、自分がどんどん傷ついて、最後には自壊してしまうことだろう。  けれども、不思議なことに私は決して傷つかない。ただ、淡々と行為を繰り返すのみ。それどころか楽しみすら抱いていた。最初からそうであったように。  私は人を抱くのが好きだった。人に抱かれるのも好きだった。それが性的欲求を満たす行為かと思っていた時期もあったが、そうではなかったのだ。  もっと崇高な何か。キリストが信者たちを癒やし、光に導いたがごとく。  いや、やめておこう。  これでは、かつて私が嫌悪した宗教団体の(やから)と一緒ではないか。  私は、人を抱いたり、人に抱かれたりするのが好きなだけの女。それでいいではないか。
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