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 いつしか私は、人々から「都会のセミ(Cicada in the city)」と呼ばれるようになっていた。  ウワサがウワサを呼び、傷負人(きずおいびと)たちが殺到するようになってきた。最初はしずかが選んだ者だけだったのが、傷を癒やされた者が別の者を呼び、さらにその者が別の者を呼ぶという連鎖反応が無限に続いていく。  なにがしかの礼を置いていく者も多かった。  最初、私は断っていたのだが、断っても断ってもきりがないので、やがて好きにさせることにした。  金銭やら物品やら、時には「自分を使ってくれ」と自らを労働力として差し出す者まで現われるようになった。傷負人の中には金持ちもいて「私の活動の拠点に」とビルを提供してくれる者もいた。  私はありがたく使わせてもらうことにして、新宿の真ん中に存在するビルに住居を移した。普段はそこで生活し、次から次へとやって来る傷負人たちの面倒も見る。
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