2

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

2

 ホテルを出ると、既に日は高かった。 「何か食べてく?」と、私は尋ねる。 「いや、別にいいよ。体が満たされたから腹は減ってない」と、彼は答える。私も同じだった。  そうなのだ。こういうとこ、感性が近い。波長が合うのだ。  だからといって、それ以上の関係ではない。普通の恋人みたいに一緒にデートに行ったり、プレゼントを贈り合ったりはしない。ホテルで(時に別の場所で)体を重ね合わせるだけ。それだけの関係に過ぎない。 「それでも」と、私は思う。それでも、他の人たちに比べれば、よっぽど深い関係。「どこか心の深い部分でつながり合えているな」と思えるのだ。  もしかしたら、前世では夫婦か何かだったのかもしれない。あるいは、兄と妹とか。教師と生徒とか。戦場で同じ部隊に所属していたとか。そのようなつながりがあったのではないだろうか?  全ては私の妄想に過ぎない。それでも他の人たちに比べれば、いくらか彼については考える。世の中の99.9%以上の人たちに興味を示せないこの私が。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!